飯能の南高麗へ移住してくる前に…
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たべる


飯能・南高麗地区のワクワクする産直のお店「畑の蔵」。野菜などが売られているコーナーの一角で、じわじわと販売面積を広げているお菓子屋さんがあります。
その名も「お菓子屋ダンカラ」。
アルミ製のばんじゅうに収められた多種多様なお菓子たち。ときには収まり切らず、もりもりに並べられていて、そんな日はラッキー! 選ぶのに迷うくらいの楽しさです。
しかも、美味しくてお手頃価格。どのようにお菓子たちがつくられているのか気になって、取材を申し込んでみました。

人形劇団から、ダンカラ
鮮やかな青のトップスで出迎えてくれた山縣倫子さん。お菓子屋ダンカラを一人で切り盛りしています。
ずっと朗らかな笑顔の山縣さん。とても楽しそう。

畑の蔵でお菓子を売ることになった経緯を伺いました。
「もともとは青梅の山の中のカフェで、お菓子を担当していたんです。初めはデザートとして、そのうち焼き菓子なども売るようになって。そのカフェへ向かうときに畑の蔵さんの前を通っていたので『ここでもお菓子が売れたらいいな』と思って、声をかけました」
そう言われてみれば、以前は青梅のカフェの焼き菓子が売られていたなぁ、と記憶がよみがえります。

「そのカフェがやめることになったけど、カフェをきっかけに個人事業主になっていたので、もったいないと思って。新しくダンカラという名前で継続することにしました」
ダンカラという不思議な名前をかっこいいロゴ。その由来は、なんと人形劇団!
「人形劇団栗団(どんぐり団)というのをやっていたんです。そもそも人形劇の資金稼ぎでお菓子の販売を始めたら『団栗団から→ダンカラ』ということで。ロゴも人形劇団のものをアレンジして、劇団を背負えて良かったかなと思ってます」
なんとご自分でロゴもデザイン。素敵な由来のお名前です。
「10年やっていた劇団で、青梅のカフェも劇団つながりで友人が誘ってくれて。お菓子を売ることにも慣れていきました」

営業前のカフェのキッチンでデザートをつくっていた山縣さん。朝早すぎて暗くて嫌だなと思い、自宅の空き部屋を改装することを思いついて実行。
ご家族の理解と工務店さんの協力で、素敵なお菓子工房をつくり上げました。
「ペンキも自分で塗ったんですよ」という内装は白を基調に、黒が効いてスタイリッシュ。清潔感があってキリッとしていて、ロゴのイメージと同じ。
空き時間も有効に使えるようになり、自宅お菓子工房のスタイルを確立されたようです。
「ただコロナ禍で、人形劇ができなくなって…」
残念ながら人形劇団は解散。カフェも無くなったことで、ダンカラとして畑の蔵での販売一本になりました。
「気がついたら、ここに流れ着いた感じ。家族もびっくりしているし、空き部屋だったここもこんな風になるとは思っていませんでした」
ただ好きでつくってきた
洋菓子から和菓子まで幅広いお菓子はどちらで修行されたのか聞いてみると、まさかの修行なし! 製菓学校も店舗での修行もなし!
小さな頃からお母さんが定期購読していた、『きょうの料理』のテキストのお菓子コーナーがすごく好きで見ていた山縣さん。
お菓子の学校に行きたいとも、仕事にしたいとも思わず、ただ好きでお菓子をつくってきたのだそう。

「福岡出身で昔はレシピ本を読んでも、材料やクグロフなどの型も手に入らないものが多くて。でも東京に出てきたときに手に入らないものが売っていたので感動しました。使いもしない道具を買ったり、流行するずっと前にカヌレを食べたり」
都内・白山の「パパダニエル」というお店だったそう。取材後に調べたところ、フランス人オーナーのダニエル・ストリュース氏による名店で、本場のレシピを日本に伝えた一人。残念ながら2011年に閉店。食べてみたかった!
「カヌレって、すごく時間がかかるのに焼き上がらないと成功かどうかわからない。型に蜜蝋を塗ったり、手間もかかるし材料も高い。何度も何度もつくっていました。でも今はコストを抑える方法にたどり着き、手にとっていただきやすい価格でご提供できるようになりました」

量が多くつくれるので、子どものおやつとしてもいろいろなお菓子をつくり、お菓子づくりが日常だった山縣さん。そして好きなことが、いつの間にか仕事に。
「配達に使う車の維持費も、いろいろなレシピ本も経費になるのがうれしい(笑)。好きなことを仕事にするよさを感じています」
ちょっとずつ、たくさん
畑の蔵に並ぶお菓子たちの多種多様なラインナップは、どのように決めているのか伺いました。
「カフェで出していたシフォンケーキがメインだけど、洋菓子も和菓子も好きで、特にあんこが大好き。おばあちゃんになっても、おはぎ50個つくるような暮らしをしたいので、和菓子もやります」
「オーブンも業務用ではなく家庭用サイズだから少しずつしか焼けなくて。でも逆に考えると、ちょこちょこ焼くので、たくさんの品数がつくれるんです」
愛用のオーブンは、なんとナショナル製!

「最近ガタが来ていて。でもこれじゃないと、どうしても思うようにシフォンが焼けないんです」と困り笑顔の山縣さん。どこかで同機種が手に入らないでしょうか…。
「ちょっとずつ、たくさんの種類」が、畑の蔵のお客さんのニーズにマッチして、自然とできてきたラインナップ。
「いちご大福も一度に4個しかつくれないから、今日は2パックだけ、みたいなときもあります。クッキーのような焼き菓子だけ置くなら日持ちもして楽だけど、それだけだとつまらない。楽しくないと続かないし、日持ちしないものは楽しくいろいろつくれるからいいんです。少しずつあれこれ置いて、売れるとまた違う種類を入れられる。いい循環になってます」

夕方行って様子を見て、明日の予定を考える。こまめに売り場に補充しながら、次は何をつくろうかと考えているとのこと。
日常のお菓子を手軽に
「高校生が立ち寄って、好きなお菓子を買える。そんな価格が理想です」
ご自身が子どもの頃に、手頃なお菓子をたくさん箱に詰めてもらった思い出を大切にされている山縣さん。
「安いなと思ってもらうのが一番。安いと買いやすいし、それが美味しかったらうれしいし」
材料費を抑える工夫をいろいろ伺っていると、物価の高騰に頭を悩ませながらも、お菓子作りのすべてを楽しむ気持ちが伝わってきました。
新しいレシピに出会う。自分に向いているお菓子か、どうしたら安くつくれるか、あれこれと考える。
山縣さんが楽しくのびのびと生み出すダンカラのお菓子を、これからも日常に取り入れていきたいと強く思いました。

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