2026年2月、飯能大通り商店…
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特集・連載


2026年2月、飯能大通り商店街にオープンした「本とビール・カモシカ」。店主の伊藤ケンジが開業までのおよそ1年間の日々を綴った「開業日記」です。
紙の本を、すこし延命させるだけかもしれないけれど
『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』(ウンベルト・エーコ、ジャン=クロード・カリエール著)という本を読んだのは、2011年ごろ。
当時よく通っていた、表参道の青山ブックセンターで出会いました。
衝撃的なタイトルですが、美しく重厚な装丁からは、逆に「紙の本がなくなってたまるものか」という出版社の意地を感じます。

もうすぐ絶滅するという紙の書物について(エーコ、カリエール著)
本当に紙の本は無くなってしまうのでしょうか。僕の考えはこうです。
紙の書物が完全に消滅することはたぶんない。けれど、再び庶民の手が届かないものになる可能性は大いにある。
この本によれば、2008年のダボス会議で、ある未来学者が「これから15年で起きること」として、4つの予言を挙げたそうです。
石油価格の高騰、水が石油並みの交易商品になる、アフリカが経済大国になる、そして「書物の消滅」。
15年後にあたる2023年時点で検証してみると、当たっていたのはアフリカの経済成長くらいで、あとは軒並み外れていました。紙の本も、思ったよりしぶといのです。
では「なくならない」とと安心していいかというと、そうは言い切れません。主な理由は「経済」という概念です。
神の本が好きな人は、しょせん少数派で、もしかしたら家に本棚がない家庭のほうが多いくらいではないでしょうか。
書籍の売上は、新聞や雑誌ほど急落してはいませんが、それは書籍価格が上がっているからで、実質その販売部数は横ばいかやや下降傾向。
そして、新聞、雑誌の落ち込みが大きすぎることで、それらを抱える大手出版社の経営が苦しくなれば、書籍部門も共倒れになりかねません。
取次や大型書店への影響も大きく、全国に張り巡らされた配本ルートの維持も難しくなる。
そうなれば、まちの本屋は仕入れができなくなったり、仕入れコストが跳ね上がったりして、消えていきます。
紙の本はその魅力や需要がありながら、コスト高によって静かに衰退していく可能性がある。
だとしたら、出版から流通、販売までを含めた「紙の本の経済システム」が崩れるのを、少しでも食い止める必要があります。
自分に何ができるかを考えたとき、大きなことは何も思いつかず、せめて一軒の本屋をやろう、とだけ思ったのです。
これが、僕が本屋になると決めた目的のひとつです。
もちろん、昔から地域の文化を支えてきたまちの本屋さんも、大型書店のみなさんも、きっと同じ気持ちだと思います。
その中で独立系書店は、そこからこぼれたものを拾う、多様性を提供する存在だと思っています。
これからも変わらず、一冊の本をひとりの人に手渡すために、僕は本屋を始めたいのです。

よい本との出会いの場所をつくりたい。残したい
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