そもそも店名でもあり、よく登場…
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2026年2月、飯能大通り商店街にオープンした「本とビール・カモシカ」。店主の伊藤ケンジが開業までのおよそ1年間の日々を綴った「開業日記」です。
今日から本屋を始めよう、と思った日
この日記を書き始めたのは、2024年12月14日(土)。新しいことを始めるのによいという一粒万倍日。
しかも天恩日も重なって、さらに縁起がよいらしい。商売には験担ぎが大事ですからね。宝くじも買いましたが、当たりませんでした。そんなもんです。
あらためて自己紹介をします。「本とビール・カモシカ」店主の伊藤ケンジです。
名前も、本屋になると決めたのを機にカタカナ表記にしました。漢字だと画数が非常によくないと、この歳になって初めて知ったからです。
商売には験担ぎが大事ですからね(2回目)。
グラフィックデザイナー・アートディレクターとして28年間、大手企業の広告やテレビCMの制作に携わったあと、40代後半でクラフトビールの醸造家に転身しました。
飯能が誇る「CARVAAN BREWERY」のあと、佐賀県で「佐賀アームストロング醸造所」の立ち上げに携わり、6年間の佐賀県での仕事を終えて、2024年夏に飯能に戻ってきました。

6年ぶりに美杉台から眺める、懐かしい飯能の風景
戻ったら、また関東でブルワリーの立ち上げでもやろうかと考えていたのですが、引っ越し先の物件を探すなかで、まず立ちはだかったのは蔵書の置き場問題でした。
本棚4本、約800冊ほど。読書家の方に比べたら大した量ではないはずなのに、これが収まる物件がなかなか見つからない…。
一時は本を手放そうかとまで思い詰め、3日間本棚とにらめっこして選び出した「処分してもいいかな」という本は、たった15冊。
…いや、そもそも選べないんですね、これが。やるなら全部手放すか、全部持って行くしかない。そう悟りました。
最終的には少し広めの部屋が見つかって、本は手放さずに済みましたが、自分にとって「本」の存在が思った以上に大きいことを実感したのです。
それまで住んでいた佐賀市でも、飯能でも、まちの本屋はすでにほとんどなくなっています。
ショッピングモールや駅ビルに大型書店はあっても、個人商店としての本屋は成り立たない、というのが現在の常識のようです。
そんな頃、内田樹さんの『図書館には人がいないほうがいい』という本を読みました。
共有地としての本屋や図書館の重要性と、失われつつある場所を守り続ける書店員やひとり書店の店主たちへのエールが綴られていました。
さらに偶然にもその頃、内田さんが飯能で講演をする機会にも恵まれました。こういうタイミングが重なるときは、きっと何かが自分を動かそうとしているのだと思います。
そうしたいろいろなことが重なって「これから一生、本と関わり続けられる仕事を始めよう」と決めました。

運命を決めた一冊。というと重いので背中を押してくれた、くらいで
もちろん、全国各地で本屋がどんどん閉店しているなかで、書店員経験もない自分が普通に本屋を始めても、成功する見込みは正直薄いと思います。
それでも、いろいろなやり方を研究して、自分なりの方法を見つけていくつもりです。これは8年前に「クラフトビールを自分でつくりたい」と思ったときとまったく同じ感覚。
まだ登山口にも着いていませんが、新しい山に登るのは初めてじゃない。この状況、わりと嫌いじゃないんです。
出版・取次・書店という独特の流通のなかで、新規参入は難しいとされていますが、後押しするように、取次大手のトーハンが個人書店の開業を支援する「HONYAL」というサービスを始めたというニュースが。
追い風、なのかもしれません。あまり調子がいいと、逆に身構えてしまうタイプなんですが。
そういうわけで本屋を始めるのですが、クラフトビールの仕事を辞めるわけではなく、何らかの形で続けていく予定です。
本屋×クラフトビール。あまり儲からないものどうしを掛け合わせてどうするんだ、という声が自分の中から聞こえてきますが、なんだか面白そうじゃないですか。
家族と一緒に飯能で暮らすことを決めたので、ここをベースに、歳を重ねても続けられる仕事のあり方を見つけたい。
そう思うと、すでにある企業に就職するのではなく、まちに根付いた商いを始めるのがいいと思っています。
実店舗を構える前に、まずはネットショップや一箱古本市などの活動から始めて、本屋になるには何をしたらいいのかを探っていきます。
(今にして思えば、ネットショップは結局やらずじまいで、気づけばあちこちのマルシェやブックフェアに出店しまくることになるのだが、この時点ではまだ何も知らない)
まったくの手探りですが、その過程をこれから記録していきます。
本屋を始めたい人、まちに本屋が増えたら嬉しいと思う人、クラフトビールに興味がある人、新しいことに挑戦したいけれど一歩踏み出せずにいる人。
そんな方たちに読んでいただけたら幸いです。
まずは開店まで、もちろんその後も。どうぞよろしくお願いします。

イベント出店のひとコマ。場所は後の「本とビール・カモシカ」となる山ニ鋼材跡
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