AKAI Factoryオープ…
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飯能市阿須のホッケー場にある「高円宮妃殿下御成記念碑」をはじめ、小町公園やカフェの看板、エクステリアなど。
飯能市内でも多くの作品を手がけている、鍛鉄家の加成幸男さんの工房にお邪魔しました。
鍛鉄とは文字の通り鉄を鍛えること。無垢の鉄を真っ赤に熱し、ハンマーでかたちつくる古来から伝わる技法です。
工房の入口の屋根に立ちそびえるのはガゼルのオブジェ。コークスの火が絶え間なく燃える工房には様々な工具が並びます。
驚いたのは、作品ごとにつくるためのハンマーも制作すること。鉄を叩くアンビル(金床)も、用途によって使い分け、幸男さん専用のアンビルはスタッフも使うことができません。
幸男さんが、コークス炉で熱くした鉄をハンマーで一気に打つと、火花が舞い散りあっという間にできたのは葉っぱでした。
聞けば、いま制作中のお寺の御朱印帳部屋の装飾に使われると言います。
「鉄の魅力は、デザイン、かっこよさ、生活を邪魔しない、失敗をつくり直していく経験」と話します。
幸男さんの作品で目を見張るのは、植物や動物の自然物から門扉、看板、照明、彫刻など、その種類の多彩さと繊細さ。
作品のアイデアやインスピレーションをお聞きすると、ルーツは子ども時代。育った原市場での大自然と川で釣りに明け暮れたことが観察眼を育みました。
祖父は材木屋、父親は理髪店を営む職人気質の家に育った幸男さん。鍛鉄家を志したのは22歳のとき。鍛鉄工芸家の西田光男さんに弟子入りし2000年に独立します。
「生活が厳しいこともあったけれど、やめようとは思わなかったですね」と言います。
世界が認める飯能の鍛鉄家
2019年には、イタリア・スティアで開催される鍛冶屋のワールドカップと称される大会「European Biennial Show of Blacksmithing Art 2019」彫刻の部で銀賞を受賞。
続く、2021年の同大会では、鍛造選手権ソロの部で銅賞を受賞します。世界25か国300人以上の参加する大会で、日本人が初参加し受賞という快挙を成し遂げました。
昨年は「ジロ・デ・イタリア」第15日スタートの町、リバローロでのスタート記念モニュメント制作へ国外で唯一の鍛冶屋として招待され、活躍の場を広げています。
「日本でも鍛鉄を身近に感じてほしい」と、鍛鉄仲間と一緒に制作したのが、飯能市にある発酵のテーマパーク「OH!!!」のブランコでした。
天覧山に響く鎚音はギャラリーを呼び、2日間の制作では例えようのない達成感と充実感を味わったそう。今では子どもも大人も楽しめるスポットになっています。
左から2番目が幸男さん
「海外での経験は全て実になっています」と8月にはチェコとイタリアの大会に出場予定です。
今春には、幸男さんのもとへチェコの若い鍛冶屋が研修に来るそう。その時期に合わせて、飯能でのイベントも企画中だそうなので今から楽しみですね!
飯能から世界へ。今後の展開が楽しみな幸男さんの作品を飯能で探してみてくださいね。
写真:赤井恒平
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