家の中に陽だまりを。朝日で目覚…
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まちと自然のバランスがよい飯能エリアは、創作の場としてアーティストやクリエイターに人気のエリア。実は飯能のあちこちにアーティストが隠れています。せっかく創作の場として選んでくれたのだから、たくさんの人に知ってもらいたい!ということで始まった「飯能クリエイターファイル」。
第6弾は「照明」をデザインする『Feel Lab』の弦間康仁さんです。
灯りの可能性を追究する実験場
アトリエは飯能市下川崎(圏央道・狭山日高IC近く)にあります。しかし、一筋縄では行けません。ナビを頼りに向かうと「本当にここで合っているんだろうか?」と心配になるほど道が細くなる頃小さな看板が登場。導かれながらも間違って他の会社の敷地に侵入したりしながら(すみません)辿り着いたのが弦間さんのアトリエ『Feel Lab』です。
Feel Labは、照明器具のデザイン製造、住宅の照明設計、店舗の照明設計など、灯りに関する様々なことを行っています。取材は、きれいに内装を仕上げている部屋で行われました。
「ここは商品を見ていただく部屋でもあるんですが、灯りの体感してもらって、その人の好みを知るための部屋なんです。ちょっとした実験場ですね」
ピピッと手元のリモコンで操作すると、白く明るい部屋になったり、暗く落ち着いた部屋になったり。確かに部屋の印象はがらりと変わります。灯りの好みは人それぞれで、薄暗い方が落ち着く人もいれば、煌々と明るい部屋が好きな人もいます。そのため、空間デザインをするときはまず体験してもらい、住む人の好みに合わせた照度でデザインをしていくのだそうです。
「私は、灯りで感じる効果を三階層に分けて考えてます。第一階層はフィーリング、パッと見ておしゃれだと感じたりするイメージです。第二階層は心理、眠くなったり落ち着いたり、懐かしく感じたりするイメージ。第三回層は生理的な働き、アルファ波が出て身体が本当にリラックスしたりする状態です」
部屋に置きたくなるような照明器具を取り扱うだけでなく、部屋全体の照明のデザインや、商業施設で光で人を誘導するデザインをしたり、その活動は多岐にわたります。特に家づくりを検討されている方は一度弦間さんに相談してみるのがおすすめ。照明器具からつくれるFeel Labは、市販のものではできない空間を提案してくれます。
3.11をきっかけに感じた違和感
弦間さんがなぜ照明デザイナーの道へ進んだのか伺ってみました。
「前職はエレベーターやエスカレーターを製造している設備会社の会社員でした。会社も儲かっていたし、収入も悪くなかったんです。でも2011年の東日本大震災があって、石巻へボランティアに行って感じたんです。なんか違うなって…」
そうして、ひょんなことから知り合った発明家の方の工房を訪ねて飯能へ。もともと、ものづくりが好きだった弦間さんは照明デザインの学校へ通いながら、その一角を借りて「身近な灯り」をコンセプトにオリジナルアイテムをつくり始めました。
ところが、学校を卒業するとき先生から「照明業界は入って行きにくいから、独立起業なんてできないよ」と衝撃の一言が…。その言葉を聞いて弦間さんは逆に燃え上がり、まだプロダクトが完成していないのに勢いで東京ビッグサイトの「東京デザイン照明展」に応募。出典が決まってから大急ぎで製作に取り掛かりました。そこで誕生したのがこの有機EL照明なのです。
そのデザイン性の高さと、当時は小型の有機EL照明というものが少なかったこともあり販売は好調。数年後には有機EL照明の第一人者としてトークイベントを行なったり、ラジオに呼ばれたりと、照明デザイナーとして一躍有名になったのです。
「つくる」ことで大切なことに気がつく
Feel Labの敷地内はいくつかの棟に分かれており、照明実験の部屋以外にたくさんの作業場があります。そこにはボール盤、コンターマシン、小型NCなど工作機械がずらり。Feel Labのプロダクトの大半はここで手づくりされているのだそうです。
一時期は量産体制を整えて大手家電量販店に置いたりもしたけれど、それだとコンセプトである「身近な灯り」と離れてしまう。いろいろ軌道修正しながら、現在は家や店舗の照明デザインや、音楽・舞台照明・インスタレーションなどアートの方面にも活動を広げています。
ちなみに『はんのーと』編集部のある、Bookmarkの照明も一部お願いしました!
最後に、飯能にアトリエを構えてよかったところはなんですか?と聞くと
「すぐ近くの畑を借りて、野菜がつくれるところですね」
との回答が。照明器具を通して人とのつながりの大切さを知り、野菜をつくることで生きることの大切さを知る。こうして弦間さんは、今日もたくさんでき過ぎた二十日大根を食べています(もう一週間同じ野菜食べているのだそう笑)。
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記事を書いた人:
赤井 恒平
飯能生まれ。AKAI FactoryやBookmarkを手がけた、飯能リノベーションの第一人者。地域や人をつなぐ「橋をかける仕事」をしています。
- 飯能市キーマン
- AKAI Factory 代表
- 埼玉県「まちなかリノベ賞」最優秀賞(R2年度)
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