大きな桜の木が庭にある川の畔の…
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特集・連載
ときどき「一度会ったら忘れられない人」に出会うことがあります。WHEEL WORKSの宮尾真さんは第一印象から強い個性を放ち、長い黒髪、吸い込まれそうな大きな瞳、よく笑う元気な声がインパクトを与えます。
今から23年前、息子さんの中学校入学とともに飯能へ拠点を移した宮尾さん。
バブル期はデザイナーとして活躍し、若い女性のトレンドファッションから学童交通擁護員「緑のおばさん」の制服デザインまで手がけました。
唯一、メンズファッションでは『カー・マガジン』とのタイアップで通信販売したブルゾンをデザイン。その経験が今も宮尾さんの創作のヒントになっていると話します。
布から鉄と石の世界へ
キャンプブームでナイフと出会い、そのデザインに惚れ、自らヤスリと万力を買って製作。1、2本目ですでに手応えを感じ「プロになる!」とアパレル時代のネットワークでフローリストナイフづくりが本業になりました。
宮尾さんがアトランタでのナイフショーに訪れた際、お客さんがつけていたターコイズの指輪に目が釘づけになります。
たちまちターコイズジュエリーの虜になり、ナイフよりも夢中になってしまいました。
デザインを彫ったあと、トゥファと呼ばれる白くやわらかい軽石に溶かしたシルバーを流して版をつくります。このトゥファキャストという技法は、冷ましてから取り出す際に割れる可能性が高いため、一発勝負のテクニックのいる作業です。
「ファッションデザイナーのときは指示ばかりで自由度が低かった。一から全部自分でつくりたくて、そういうことに飢えていたんだよね」
ジュエリーは男性らしさ、女性らしさ、どちらも兼ね備えた繊細な作品ばかり。
「もともと考え方がジェンダーでこだわってはいないけど、レディースのデザインをしてきたから、ターコイズのごつい表現が難しくて未だに抜けない。ナイフもレディースっぽくなるし、でも『そこがいい』と言ってくれるお客さんもいる」と笑顔が。
「日本」を表現した新しいブランドをつくりたい
飯能のシェアアトリエ、AKAI Factoryにはオープン当時から入居し、黙々と製作を続け6年。常に考えてつくることが生活そのままにつながると話す宮尾さん。
今後の目標などを聞くと「そういうものはないです。降りてきたものをすぐにつくっているので。でもあえて言うなら違うブランドをつくってみたい。日本を表現したいですね。『HINOKUNI』というブランド名で赤い石のみを使って、日本の祭りをテーマにしたようなジュエリーを」
目標はないと言いながら、すでに大きな未来を描いていることがわかりました。
写真:赤井恒平
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記事を書いた人:
飯塚 まりな
イラストレーター兼ライター(主に人物取材を好む)。最近は愛車で過ごす車中ランチが生活の一部。夢は発展途上国で医療や教育に関わる日本人の取材。
2021年に働く30代男女の仕事や生活についてインタビューした『〜西武沿線上で探した〜近所の30代「今」何してる?』を全国の天狼院書店発売(2022年1月まで)。
- 『ちいき新聞』レポーター(2020年〜)
- 『ショッパー』レポーター(2019年〜)
- 介護福祉士
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