生まれも育ちも飯能。野山をかけ…
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秩父銘仙のこれからを見据えて
観光スポットとして話題の秩父。その中で秩父銘仙という織物産業があります。数年前、ちちぶ銘仙館を訪れた関崎まきこさん。
花楽多(からくた)という屋号で、手づくりの和小物、トンボ玉を製作して販売や展示などを行っています。
子どもの頃から機織り機にあこがれていた関崎さんは、ちちぶ銘仙館に並ぶ機織り機を見たことをきっかけに「秩父銘仙後継者育成講座」を受講。コロナ禍の中、3年間を学びの時間に充て、織から染織まで技術を習得していきました。
糸から布になっていく工程が楽しい
秩父銘仙は平織りで、裏表のない絹織物です。ほぐし捺染によって表の色があせても、裏を仕立て直すとリバーシブルで着ることができます。
縦糸を整え織り機で仮織りし、型染めをした後に緯糸(よこ糸)の染めを行う製法です。
再び織り機にかけ、仮織りした糸をほぐしながら緯糸を織り上げます。いくつもの工程を得てようやく質感のよい綺麗な反物が完成します。
「高機織を覚え、手織りだと完成までに3か月の時間を要します。糸から布になっていく工程が楽しく、3年目に入ってからは自分で考えたデザインで反物をつくることができるようになりました」
秩父銘仙といえば、柄の自由度が高いことでも知られ、伝統的なものから最近では大胆でモダンな柄が人気。
大正から昭和までのファストファッションでもあった着物は、当時の女性たちの流行そのものでした。
関崎さんは今後「お花」をテーマに製作していこうと考えています。もともと秩父銘仙は花柄が有名で、豊かな自然の中で目にする植物はデザインのヒントになっているそうです。
ピンクの反物は、秩父の芝桜をイメージして織った作品。思ってもいない色どうしが合わさると、想像以上によい色になることが楽しみの一つだそうです。
まずは着てもらうこと
飯能のシェアアトリエ、AKAI Factoryに入居したのは、1年前。自分専用の織り機も手に入れ、着々と製作環境が整う関崎さん。
「秩父へ行く電車から『AKAI Factory』の建物が見えて、ずっと気になっていたんです。勇気を出して行ってみたらアトリエは工場跡地と聞いて。銘仙を学んだ銘仙館の雰囲気と似ていたので、すっかり気に入ってしまいました!」
今後は反物を着物だけではなく、ワンピースやロングドレス、ストールにするなど、現代風なアレンジもしながら伝統を伝えていきたいとのこと。
「これからは、着る人の気持ちを考えながらつくっていかなきゃと思ってます。まずは着てもらうことが大事ですね」
写真:赤井 恒平
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