AKAI Factoryオープ…
-
特集・連載
生まれも育ちも飯能。野山をかけまわり、想像力豊かに育った彼女は、現在21歳。杉原出雲さんは、東京藝術大学・日本画専攻の3年生です(取材時)。
作品は風景画から人物画、抽象画までジャンルを問わず製作し、授業の課題に向き合う日々を送っています。
「AKAI Factory」の最年少アーティスト
2022年3月、飯能のシェアアトリエ「AKAI Factory」に最年少アーティストとして入居。
アトリエには課題で製作した絵が立てかけられ、壁には筆や刷毛が並んでいます。
「日本画は扱いが難しい…」とつぶやく杉原さん。日本画を描かなければ、どう使うのか検討もつかない色とりどりの岩絵具、胡粉、銀箔などを見せてもらいました。
「油絵とは違って、岩絵具と呼ばれる粉や膠(にかわ)を指でといて、和紙に描くのが魅力的でしたね」
自然の風景や個人的なできごとをありのまま絵に写し、心のイメージを形にしたいと話してくれました。
飯能の自然からインスピレーション
授業の課題で描いた風景画は、飯能の川にかかる橋と暮れる山並み、橋を渡ると見えてくる家には明かりが灯り、人々の暮らしを想像させます。
「橋の柵は一度胡粉などで盛り上げてから、銀箔を貼っています」
指でなぞると柵の一部が盛り上がり、一瞬見ただけではわからない立体感を感じることができました。
太陽が西の空に沈んでいくもの哀しさを感じる風景画に、飯能の山々の静けさが伝わります。
「生まれた場所、住んでいるところの気候や風土がその人のすべてに影響すると思ってます。それはどの作家も感じていることじゃないかって。いつも自然が身近にあって、特に私にとって山は大きな存在で、心の神様なんですよね。日本は雨が多くて、雨が降っている日も好きです」
山から見える霧、空に浮かぶ雲の変化など、生きとし生けるものからインスピレーションを得て、自分の感度を高めながら手を動かし、作品と向き合っています。
「AKAI Factory」でやってみたいこと
入居前から友人と個展を開催するなど、精力的に活動していた杉原さん。大学とは別の場所で自分のアトリエがほしかったそう。
「これからは日本画以外の画材や自由な表現を『AKAI Factory』でやっていきたい」とやわらかい笑みがこぼれました。
杉原さんの作品は全体がぼんやり描かれ、霧や煙の先にある向こう側を知りたくなるような印象を与えます。
「見えているものの不確かさや信憑性のなさ」をテーマと語る21歳は、これからどんな絵を描いていくのか、期待が高まりました。
写真:赤井 恒平
関連記事/おすすめ記事