動きも表情もまさにカエルそのも…
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慣れ親しんだまちの風景が、あるとき突然変わってしまったり、お気に入りだった建物がいつの間にかとり壊されていた…。そんな経験はないでしょうか。
写真の一枚でも撮っておけばよかった。誰か記録してくれている人はいないだろうか、と思うこともあるかもしれません。
スケッチ画家の根立隆(ねだちたかし)さんが、飯能の景色をスケッチし続けて15年。根立さんが飯能へ移住したきっかけは、勤めていた会社の先輩に招かれた名栗でのバーベキューだったそうです。飯能の景色が気に入り、ちょうどお家を購入するタイミングだったため移住はすぐに決まったといいます。
子どもの頃から絵を描くのが好きだった根立さんが、スケッチを始めたのは2000年頃。印刷会社でデザインを担当してきた根立さんは、当時新しく立ち上げられたマーケティング部門を任されることになります。デザインを離れる際に「やはり自分の手で何かやりたい」と、始めたスケッチはそれから根立さんのライフワークに。
「レトロスケッチの会」というグループで、谷中や神保町などの古い建物を描いていた根立さんが飯能の建物に注目したのは「飯能まちなか古民家ツアー」に参加したことが始まりでした。
飯能の建築家、市野彰俊さんと浅野正敏さんが行っていたそのツアーにたまたま参加した根立さんは、飯能にも古くて面白い建物が残っていることを知り、スケッチを数百枚と描きためます。それを10年の区切りにまとめたのが『飯能スケッチ帖まちなか編2006-2016』です。
スケッチの他に、取材をしたり資料で調べたことを編集し、本に仕上げるのに12年かかったというこの画集には、飯能のまちなかの魅力が詰まっています。
根立さんがスケッチに使うのは、パイロットのスーパープチ(細)という耐水性のサインペン。なんとこの細いタイプは飯能のお店の文具売り場には置いていないそうです(ぜひどこかで取り扱ってほしいものです)。
着彩は透明水彩絵の具。シャドーグリーンで影をつけ、イエローオーカーで下塗りをした後ポイントで色をつけます。
写真に比べて、より懐かしさや親しみを感じる根立さんのスケッチ。「絵は情報量が少ないからかもしれません。自分が認識していないものは描いていないので」と根立さん。
出身である新潟県柏崎市にはレトロな建物が多く、子どもの頃から親しまれてきたそう。そんな根立さんの描くスケッチからは、その建物のたどってきた歴史とその周りの人々の生活の足音や季節の空気感が伝わってくるようです。
飯能の古いまちなみも取り壊されたり建て替えられたりと、やはり少しずつ変わっています。「微力で守れるほどの力はないですが」と言う根立さんですが、根立さんのスケッチは貴重な記録であり、人々の大切な想い出でもあります。
飯能の懐かしい景色がスケッチに残り、古きよき場所の魅力が次世代へ語り継がれていくのではないでしょうか。現存の建物については「飯能のまちにはこんなところがあるのか」と新たな発見をする楽しみもあります。
まちなか編に続き、いつかは里山編もつくりたいとのこと。スケッチはすでにたくさん描かれているとのことなので、今から楽しみです。
12月にはマルトクカフェにて作品の展示も予定されていますので、こちらも楽しみにお待ちください。また同カフェでは毎年大人気のカレンダーが販売中です。売切必至ですのでぜひお早めに!
写真:赤井恒平
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