場所にとらわれない働き方が増え…
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くらし
固定種野菜をご存知ですか? 簡単にいうと、種をとってまた植えると同じものができる野菜のこと。人工的なかけ合わせをしていない伝統的な野菜です。
飯能には、この固定種野菜を栽培している農家さんがいくつかあります。その一つが「めぐるみどり」さん。味や形に個性が残る、受け継がれてきた野菜たちを通して見えてくる飯能の魅力とは?
独立2年目の小さな農家
自然豊かな場所に暮らしているのだから、地元の新鮮な野菜が食べたい!そんな欲求を気軽に満たしてくれるのが固定種野菜農家「めぐるみどり」さん。
HPから注文すると2,000円分の新鮮で無農薬の野菜が自宅に届きます(飯能市内は代表の岡田和樹さん自らお届けしてくれるのもポイント!)。箱を開けると、旬の野菜がいろいろ。スーパーでは見かけないちょっと珍しいものも入っていたりと、毎回ちょっとした驚きも味わえます。
7月に注文した時はエゴマの葉、じゃがいも(アンデスレッド)、玉ねぎ、赤ひげねぎ、黒田五寸人参、相模半白きゅうり、へちま(!?)、紫唐辛子(!!??)が入っていました。
このかわいらしい野菜たちを育てているのはピチピチ30代の岡田和樹さん。飯能出身というわけでもなく、農業未経験からスタートして、なぜ飯能で農家になったのか? その謎に迫ってみましょう。
固定種野菜・自然栽培を選んだ理由
飯能では希少な平地が広がる精明地区。ここに「めぐるみどり」さんの畑はあります。年間で約100品種ほどの野菜を育てているのだそうです。
よく見るときれいに整った畑ではなく、野菜以外の草も生えていますね。岡田さんは農薬はもちろん、化学肥料も使わない自然栽培で野菜を育てています。なぜ、あえてリスクの高い手法を取り入れているのでしょう?
「農業を始めるときに、何が起きるかわからない世の中でまず『続けていく』ことを大切に考えたんです。そこで、外部依存を極力少なくするやり方を選びました。例えば、固定種野菜を使っているのは種がとれて、毎年同じものをつくることができます。市販されているF1種だと収穫量は多くなるけど、種が買えなくなったらつくれなくなってしまいますから。また、農薬は使用せず、ビニール・機械はなるべく使わないのも、なんらかの理由で資材の価格が高騰したらどうしても販売価格を上げなくてはならなくなってしまう。自然栽培ならそういったリスクは少ないので安定した価格で出荷することができます」
少量多品目なのも農家を「続ける」ための手段なのです。万が一病気が蔓延しても、他の野菜が無事なら収入ゼロのリスクを回避できるという仕組み。また、めぐるみどりのお客さんは一般家庭が多いので、一箱に多種多様な野菜を入れられた方が楽しんでもらえるという理由もあるそうです。
やり方はひとつじゃない
岡田さんは、20代はサラリーマンとして働いたり、音楽関係の仕事をしていました。そこで体調を崩したのをきっかけに、自分にとって本当に欠かせないものは何かを考え、野菜をつくる仕事への転身を決めたのです。
まず最初に岡田さんは埼玉の大規模農家で経験を積みました。その後も埼玉県内で就農先を探し、飯能で無肥料栽培をやっている小島農園さんを発見。1年間学ばせてもらい、固定種野菜農家「めぐるみどり」として独立したのです。田舎すぎず都会すぎない飯能は、需要と供給のバランスがよいのもポイントだったのだとか。
「無肥料無農薬というやり方が唯一正解だとは思っていません。世の中に安定的に野菜を供給するには大量生産も必要ですし、選択肢として有機野菜があればいい。農家としてはまだまだ駆け出しなので毎年がチャレンジです。でもいつか、自分の経験が誰かの参考になって、農業を始めてくれる人が増えたらうれしいです」
そんな想いから岡田さんは畑での取り組みをYouTubeで発信しています。どんな場所で育てているのか、どういった育て方をしているのか、生育状況などをおもしろおかしく配信しているのです。
自分が食べる野菜がどんな場所で、どのように育てられているのかなんて気にしたことがなかったです。野菜との距離がグッと縮まった気がします。でも、やっぱり無肥料無農薬って大変じゃないですか?
「大変なこともありますが、江戸時代はみんなこのやり方だったんですよ」
と、岡田さんは優しく笑いながら答えてくれました。みなさんもぜひ一度、飯能の恵みがたっぷり詰まった野菜を味わってみてください。ご注文はめぐるみどりのHPから!
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記事を書いた人:
赤井 恒平
飯能生まれ。AKAI FactoryやBookmarkを手がけた、飯能リノベーションの第一人者。地域や人をつなぐ「橋をかける仕事」をしています。
- 飯能市キーマン
- AKAI Factory 代表
- 埼玉県「まちなかリノベ賞」最優秀賞(R2年度)
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