たべる

ライター:ふさ

2023.04.27

アメリカンパイ専門店 PIE & COFFEE「PIT」

アメリカンパイ専門店
PIE & COFFEE「PIT」

「アメリカンパイのお店、PITさんを取材してみませんか?」と副編集長に声をかけてもらったのは、飯能へ引っ越してきて半年ほど経ったときのこと。

「アメリカンパイのお店があるんですか?!」引っ越してきてからというもの、かなり積極的に情報収集していたつもりだったけど、まだまだリサーチ不足。まさかパイ専門店があるとは…。

もちろん行きます!とふたつ返事で答えたのは、実は私16歳から25歳までアメリカで生活していたので、アメリカンパイには思い入れ強めなのだ。

サクサクのパイ生地も好きだけど、どちらかというとビスケット生地の、ザ・アメリカンパイ!というパイが好き。

ある休日、現在お隣入間市の仏子に期間限定店舗を構えてらっしゃるPITさんに娘とお伺いして、店主の田村さんにお話を聞いた。

そしてお話しながら、思い返すと私のアメリカ時代の思い出には、いろいろなところにパイが結びついていたんだなと気がついた。

アメリカではサンクスギビングやクリスマスなどのイベントになると、家族や親族と大きなテーブルを囲んでディナーを食べるのが恒例。

ディナーといっても、朝からずっと食べている家族もあれば、昼や夜からスタートするところも。大量のごちそうを、みんなでわいわいと食べながら、家族の時間を過ごすという感じだった。

私はアメリカで生活していた当時、現地に家族も親族もいなかったのだけど、幸いにも友人が数家族「うちに食べにおいでよ!」と誘ってくれるものだから…。

食いしん坊で、美味しいものが大好きな私、そういうときは計画を綿密に立てて、図々しくも朝食事をスタートする家族、昼スタートの家族、そして晩スタートの家族の、1日で3家族にお邪魔したりしていた。

3家族のそれぞれの味を楽しめるなんて。そして〆には、3家族それぞれの手づくりデザートも最高。各家庭のママたちに「あなたは本当に食いしん坊ね」と笑われた。

ディナーもバラエティに富んで美味しかったけど、デザートもそれぞれ違っていた。キッチンには、たいていホールで焼かれたパイが置いてあった。

ディナーのあと、各家庭のママたちに「お腹いっぱいでも、パイ食べるでしょ?」と言われたら、答えは「Yes, Of course!」

みんなに指をさされて、からかわれるほど膨れたお腹で、パイを食べながらみんなの話を聞いたり、ゆっくりテレビを見たり、映画を観たり。

私のアメリカ生活のなかで、現地の友人宅で過ごせた時間は忘れられない素晴らしい思い出。一人ぼっちのアメリカ生活が、とってもあたたかいものになったのは、こうやって迎え入れてくれて、ディナーやパイをごちそうしてくれた友人家族たちのおかげだった。

友人宅以外でも、パイは生活のいたるところに根づいていた。いつも通っていたコーヒー屋さんでは、ピーカンナッツとチョコレートのパイを毎回食べていたし、真夜中に友人とドライブして行く24時間営業のレストランの入り口には、数種類のパイがタワーのように並んでいて、深夜なんてことを忘れて甘いパイをつついた。

ふだん買い出しに行くスーパーでは、ベーカリーコーナーにホイップクリームがたっぷりのった、大好物のチョコレートクリームパイがあったので、ついでにそれを買うのがお決まりだった。

本当に、いろいろな場面にパイがあって、友人と恋人と、家で一人で、友人の家族たちと泣きながら、笑いながら、悩みながら、勉強しながら、ただおしゃべりしながら、アメリカにいた約10年で、たくさんパイを食べた。

と考えると、私のアメリカ時代の青春は、パイとともにあったといっても過言ではない。

なので、PITさんにお邪魔して、大きな大きなビスケット生地のホールのパイを見たとたん、懐かしい気持ちがどっとあふれた。

店主の田村さんのつくるパイは、もともとアメリカ南部の料理店で働いていらしたときのバターミルクビスケットの生地を、パイとして生まれ変わらせたものだそう。この食べ応えのある生地、たまらない。

PITさんには、だいたいいつも6種類ほどのパイが用意されていて、日によって内容が違うそう。

私たちがお伺いした日、一つに決めきれずに、朝にパンプキンパイ、昼にひき肉とマッシュポテトのシェパーズパイ、そしておやつにチョコレートチェスパイをいただいた。

なんなら、次の日の朝もチョコレートチェスパイを食べた(明らかに食べ過ぎ)。

シェパーズパイを食べたのは、まさにアメリカ時代ぶり。そしてチョコレートチェスパイは、まさに私がかつてスーパーで買っていたチョコレートクリームパイにかなり近かった。

が、正直なところ、シェパーズパイもチョコレートパイも、PITさんのパイのほうが私の記憶のパイより数倍美味しい笑。

店主の田村さんは、2018年に入間の米軍ハウスで最初のPITをスタートされたそう。そして入間や狭山がいかにアメリカ文化とつながりがあるのかを教えてくださった。

ジョンソンタウンの名前は聞いたことがあったけど、恥ずかしながらそれ以上の知識がなかった私は、その昔、稲荷山公園のあたりが「ハイドパーク」と呼ばれ、アメリカ軍の将校たちが暮らしていたことをこの取材で初めて知った。

そして軍が撤退してからは、そのエリアの米軍ハウスにいろいろなアーティストたちが移り住み、文化が生まれる場所になったことも。

だから、PITさんのインスタグラムのアカウント名が「PIT HYDEPARK」なのか!とやっとそこでわかった。

余談だけど、取材後気になって調べてみたら、あの有名な細野晴臣さんの『HOSONO HOUSE』というアルバムは、細野さんがハイドパークで暮らしていた頃、細野さんのご自宅で収録されたものらしく、日本で初めてハウススタジオで録音されたアルバムなんだそう。

それを知ってからというもの、池袋から飯能へ帰る電車で稲荷山公園を通りながら『HOSONO HOUSE』を聴いている、ミーハーな私だ。

店主の田村さんは、そんなハイドパーク特有の文化、そしてコミュニティをできるだけ今の時代にもつなげていきたい気持ちがあるという。

実際、パイを売っていたら、その昔米軍ファミリーの奥様にアメリカンパイのつくり方を習ったという日本人女性が声をかけてきたこともあったそう。

昔のハイドパークと今のハイドパークがつながった瞬間だ。そして今PITには、家族連れ、おひとりさま、おじいちゃんおばあちゃんたちと、幅広いお客さんが訪れて、アメリカンパイを楽しみにしている。

お店に置いてあった古いCOOK BOOKや狭山に関する本を見せてもらいながら、田村さんとパイの話で盛り上がった。

お店のお話を聞きに行ったはずなのに、私がいかにパイ好きなのかという話ばかりしていた気がするので、取材失格だ。

でもこれだけは言いたい。PITさんのどのパイも、最高に美味しい。アメリカで10年パイを食べまくった私だから、これは自信を持って言える。

今この記事を書いている2023年春現在、PITさんは仏子の店舗営業がメイン。稲荷山公園隣接の「コメと茶」さんでも、金曜と土曜にパイがあるそう。

6月以降は、仏子のお店はクローズして、飯能のお店でテイクアウト専門として営業される予定とのことだった。最新情報はぜひインスタをチェックしていただきたい。

かつてハイドパークに暮らしていたアーティストたちにより、稲荷山公園では「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル」という大きな音楽フェスが開催されていたそうで、そのフェスがこの春、17年ぶりに再開するそう。

開催は、4月29日(土)30日(日)の2日間。PITさんもフードエリアに出店されるそうだ。

ハイドパークの文化と野外での音楽を濃密に味わえる2日間になることに違いない! 私も娘と行こうかなと計画中。

関連情報

店名
PIT
所在地(仏子)
入間市仏子879-16
所在地(飯能)
飯能市笠縫160-1
営業時間(仏子)
10:30〜16:00
(9:30〜11:00 モーニング)
定休日
火・水・第1・3月曜
Instagram
@pithydepark
Facebook
@PIT-215842645983133

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記事を書いた人:
ふさ

2022年夏、都内から飯能へ移住。都内へ出社したり、テレワークしたりの生活を始めたばかり。

  • 本業以外にも、写真を撮ったり、以前は育児雑誌のブロガー、最近は英語の先生も
  • 車で、娘とふたり旅するのが大好き。最長記録は東京⇆九州
  • ビール愛(詳しくないけど)かなり強め

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