飯能河原から歩いて数分のところ…
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たべる
飯能の美味しいラーメン屋といえば、必ず店名が上がる「中華そば きなり」。飯能駅北口から徒歩3分と、来店しやすい場所にあります。
白を基調とした店内は明るく、絵画や観葉植物が置かれるなど、まるでカフェのようなお店です。
厨房を囲むように配置されているカウンターの席数は9席。通常よりも幅広の天板が使われているので、座ったときの圧迫感がありません。
さっと食べてさっと出る、というラーメン屋のイメージとは違う雰囲気に、リラックスして待っていたら醤油そばができあがりました。
シンプルなのに、味わい深い
煮干しのよい香りとともに、目の前に置かれた醤油そば。きちんと並んだ具材をかきわけて麺をすすると、今度は醤油の香りが口いっぱいに広がります。
淡いピンク色が印象的なチャーシューは、熱で色が変わる前に、あわてて口に放り込みました。
ひと口目のインパクトがやわらかな味つけなので、いつまでも飽きずに食べ続けてしまいます。
茹でた青菜の甘さや、穂先メンマのコリコリとした歯触りなど、厳選された具材が食感に変化を与え、食べることに夢中。あっという間にスープまで飲み干してしまいました。
もうすこし食べたいな、そんなときにうれしいのが「和え玉」。
よく混ぜてそのまま食べても、残ったスープに入れて食べても美味しい麺のおかわりです。
雑味が味の印象を変える
お品書きには、再仕込み醤油やパエリアの色づけに使うサフラン、高知の仁淀川ぞいで採れる山椒など、こだわりの食材が使われています。
店主の土橋健司さんがラーメンの世界に入ったのは30代。材料を選び抜く感性は、和食やフレンチの世界で修行を重ねた経験から生まれました。
さまざまな食への興味、関心が、ミシュランに選ばれるラーメンを生み出しているのです。
「一番こだわっているのは、なるべく雑味を感じさせないことです。雑味は味を決める要素の一つと言われていますが、雑味による味の印象が強すぎると、食べている途中で飽きてしまう気がします。ラーメンのつくり手として、最後の一滴まで美味しく食べてもらえる一杯を目指しています」
魚介を中心に、干し椎茸、日高昆布、鶏肉など5〜6種類の出汁をブレンドしてつくる、きなりのスープ。素材によってベストな旨味が出るタイミングは異なります。
「雑味のないクリアな味にするために、火を入れる時間の長さ、煮出す温度など素材ごとの見極めが大切です。魚介系の出汁は火を入れたときが美味しさのピークですが、動物性の出汁は味が安定しないため、火入れの直後にはブレンドできません。一晩置いて、味が落ち着いたものを使います」
飯能で感じた「暮らすこと」の意味
現在は住まいを飯能へ移している土橋さん、加奈さんご夫婦。移住を決めたのは、住宅展示場で見かけた「暮らし方を選ぶ」というキャッチコピーがきっかけ。
想い描きはじめた未来の姿に、以前から訪れていた飯能の風景が重なりました。
庭で採れる梅や柿で、梅酒や干し柿をつくったり。庭でのバーベキューも経験済みと、郊外での暮らしを楽しんでいるお二人ですが、本当はまだまだやってみたいことがあるようです。
「家の隣には、野菜を育てているご近所さんの畑があって、すぐ近くには里山が広がっています。しばらく中止になっている地元のお祭りにも参加してみたい。飯能に残る自然や文化と自分たちの生活が、もっと近づけばいいなと思ってます」
東京の駒込からはじまった、土橋さんのラーメンに向き合う毎日に、飯能での暮らしが新しい色をプラスしていくのかもしれません。
写真:渡邉優太
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