秋といえば、サツマイモ。飯能の…
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はたらく


狭山茶の主産地、入間市にある「池乃屋園(いけのやえん)」は、江戸時代後期からお茶づくりを続ける老舗の茶園です。

広大な茶畑を自ら管理し、摘採から製造、販売までを一貫して行う「自園・自製・自販」のスタイルを守り続けています。
伝統を大切にしながらも、時代に合わせて進化を続けるその姿は、まさに狭山茶の中心的存在と言えるでしょう。
茶師・池谷英樹さんが守る「味の狭山茶」
池乃屋園を率いるのは、茶師・池谷英樹さん。

“繊細な香りや味を見極める鑑定技術”と“原葉をよいお茶へと加工する技術”の両方で最優秀とされる「農林水産大臣賞」を受賞した職人です。
池谷さんが培ってきた技術は、茶畑の管理から製造、販売に至るまで全工程に活かされます。その確かな技術と経験が、池乃屋園の狭山茶の味を支え続けています。
“強い深蒸し”で仕上げる、優しい味わい
狭山茶の味を左右する最初の工程が「蒸し」。
摘み取った生葉を蒸して酸化を止め、うま味や香りを閉じ込める。「蒸し一発」と言われるほど、茶師にとって重要な工程です。
池乃屋園は、一般的な深蒸しよりもさらに長く蒸す「強深蒸し」製法。渋みを抑え、まろやかな味わいに仕上げています。

どんな淹れ方でも美味しく飲めるよう、日々の気温や湿度、茶葉の状態に合わせて蒸し時間を秒単位で微調整。
誰が淹れても「池乃屋園らしい味」が再現できるように工夫されています。

季節とともに変える「仕上げの火入れ」
摘みたての茶葉は、2週間以内に荒茶(あらちゃ:中間製品)に仕上げなければなりません。気温や湿度の変化に対応するため、製造は夜通し続くこともあります。

生葉300kgからできる荒茶は、わずか60kgほど。その限られた茶葉を最高の状態に仕上げるために、池谷さんは一つひとつの機械を丁寧に見守ります。
機械と職人の感覚が調和してこそ、品質の安定が生まれるのです。

摘みたての茶葉を荒茶にしたあとも、池乃屋園ではすぐに出荷せず、季節に合わせて火入れ(焙煎)を変えています。
「お茶は季節ごとに味わいが変わります。秋、冬に向けてつくられるお茶葉は、焙煎を強めほっこり楽しめるお茶にしています」と池谷さん。
季節の移ろいを味わいとして表現するーそんな丁寧な手仕事も、池乃屋園の魅力の一つです。

変わる茶業界の中で、支える力に
近年は、抹茶ブームによる原料価格の高騰や、茶農家の減少など、お茶業界を取り巻く環境が大きく変化しています。
そんな中でも、池乃屋園は自分でつくる、売るという一貫体制を強みに、安定した供給を可能に。生産者どうしの連携にも力を入れ、地元産のお茶を広く流通させる取り組みを進めています。
「一人ではなく、連携して広げる時代。自分たちの手で、狭山茶の未来をつくっていきたい」と池谷さん。
狭山茶の根っこを守りながら、その可能性を次の世代へつないでいます。

飯能にも広がる、池乃屋園の味
飯能市内の飲食店でも、池乃屋園の茶葉を使うお店が増えています。
地元で育ち、職人の手で丁寧に仕上げられた狭山茶は、食後のお茶やスイーツとの相性も抜群。
生産者として顔だけでなく、茶商としての顔も持つ池谷さんだからこそ、狭山茶の価値を守り、広く届けられるのです。

茶師と茶商の両面で支えられた狭山茶の味わいを、この冬ぜひ体感してみてください。
関連情報
- 店名
- 池乃屋園
- 所在地
- 入間市西三ツ木59
- TEL
- 04-2936-0639
- 04-2936-0639
- 営業時間
- 9:00〜18:00
- 定休日
- 日曜・祝日(4〜6月・12月は無休)
- @japanesetea_ikenoyaen
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記事を書いた人:
ハネジ ユキエ

生まれ育った沖縄を離れ、2024年春に飯能へ移住。
ものづくり、暮らしを豊かにするモノ、地域を元気にするヒト、大人からこどもまで楽しめるコトを取材しています。最近は、いちご栽培のお手伝いと家庭菜園に夢中。しゃべるとなまってます。
- カメラマン兼ライター
- 紙もの全般、動画などの制作ディレクター
- 書籍づくりに向けて活動中
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