特集・連載

ライター:森畑 鶏

2023.11.24

森畑鶏の推し酒場 vol.02「BAR STRANGER THAN PARADISE」

森畑鶏の推し酒場 vol.02
「BAR STRANGER THAN PARADISE」

飯能ならではのディープな夜の魅力をお伝えする森畑鶏の『推し酒場』。わたくし森畑鶏が、ずっと気になっていたあの扉を開け、暖簾をくぐり、夜の推しを見つける夜の放浪記。

今夜のお店は、人を惹きつけるようでいて、試してもいるような不思議な存在感を放つ「BAR STRANGER THAN PARADISE(バー ストレンジャー ザン パラダイス)」さんです。

東飯能駅西口を降りてすぐ、大きな「BAR」の看板と真っ赤な階段が目印です。

検索に出てこないBAR

こちらのお店、ネットにほとんど情報がありません。グルメサイトは最低限の情報のみ、ホームページもなく、唯一あるインスタグラムは2020年7月の「インスタグラム始めました」のまま時が止まっています。

情報があふれる昨今、看板の潔さと存在感ある階段、それ以上の情報はなく、かろうじて入口の壁にみつけた情報は「きょうのオススメ パパさく とくせいビーフカレー」。

そんな謎めいたBARにご同行いただいたのは、ご近所の自転車屋さん「サイクルハウスMIKAMI」の店主、三上和志さん。

なんとBARのマスターとは地元(入間市)の同級生だそうで、ちょうど同じ頃にどちらもお店を開いて、お互いなんか似ている人がいるなーと思っていたら同級生だったなんてエピソードも。

人との出会いがつながっていく

マスターの渡邉卓也さんがお店を開いたのは、今から20年ほど前30歳を過ぎた頃。その時々で声をかけてもらい、BARやイタリアンで腕を磨きながら「30歳までには自分の店を持ちたい」と思ってはいたものの、なかなか現実味を帯びません。

そんな様子を見かねたのか、当時勤めていたBARのオーナーさんが「じゃあ、俺が探してやるよ」と突如、物件探しが始まったそうです。

そして「一度見て来い」と言われるがまま行ってみたものの「うん、まあ、ここじゃないな笑」となり、急にリアリティが出てきて、自分のお店を持つことが現実味を帯びたんだとか。

物件は決めたものの先立つものがなかったマスター。先輩の大工さんが事業計画づくりを手伝ってくれたり、お店を出すと知った友人たちが手助けしてくれたり「結局、人なんだよね」とマスターは振り返ります。

こだわりと偶然という魅力

お店に入ると目の前にはズラリと並ぶボトルの数々と長いカウンター。光に照らされ恍惚と輝くウイスキーやラムに、マスターのこだわりが隠されています。

20年の時を経て黒く艶やかに輝く重厚なカウンターの先には、ブルースミュージシャンでもあるマスターのこだわりがつまったジュークボックスが鎮座。

戦前のブルースや60年代ロックなど、音楽好きならレコードのラインナップを見るだけで美味しいお酒が飲めそうです。

「この入りづらさがよかったんだよな、当時は。ただ今は困ってます」と笑うマスターですが、最近は飯能に移住したばかりの方も赤い階段を上がってきてくれるのだとか。

「BARってね、お酒を飲むだけでなくてさ、いろんな人がいて、それこそ生きていても話すはずのない人と話すことができて、そういう楽しさがあるんだよね」

ネットニュースも広告も、AIが勝手にオススメしてくれるこの時代、たまたまや偶然の機会が失われているのかもしれません。

AIのオススメに出るはずもないこのBARは、気骨のあるマスターのこだわりと、階段を上がった人にしか訪れない偶然という魅力を味わえる「STRANGER THAN PARADISE」なのです。

※とくせいビーフカレーは現在、お取り扱いはありません。

関連情報

店名
BAR STRANGER THAN PARADISE
(バー ストレンジャー ザン パラダイス)
所在地
飯能市東町2-3 2F
TEL
042-971-4026
042-971-4026
営業時間
18:00~2:00(L.O. 1:00)
定休日
日曜日
Instagram
@bar_stranger_than_paradise
月1回のライブ
出演者募集中、詳細はマスターまで

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記事を書いた人:
森畑 鶏

飯能に移り住んで10数年。家庭菜園、薪ストーブ、ピザ窯づくりなど、田舎暮らしでやりたかったことを一通り経験。2周目の田舎暮らしに向けて新境地を開拓中。

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