特集・連載

ライター:飯塚 まりな

2024.03.26

「センパイ移住者のーと」#14 山本篤さん・瑞紀さん

「センパイ移住者のーと」#14
山本篤さん・瑞紀さん

昨年3月に、横浜市から飯能市へ移住した山本さんご一家。

飯能駅から車で走ること約10分。里山広がるのどかな風景の中に、三角屋根の青いお住まいが見えてきました。

「こんにちは」と手話で出迎えてくれた山本篤さん・瑞紀さん。ご夫婦ともに生まれつき聴覚の障がいがあります。

二人のお子さんを持つ親でもあり、この春から息子さんは小学5年生、娘さんは1年生です。

移住を検討したのは2020年、コロナ禍になってから。以前はマンション暮らしで、窓を開ければ隣の建物の壁が見えるところで暮らしていました。

「庭のある家に暮らしたい!」と土地探しをするも、なかなかよい場所にめぐり会えず、3年かけて見つけた移住先が飯能でした。

篤さんは、平日は仕事で都内へ通勤。飯能駅から乗り換えなしで都内へ出られるのはメリットと話します。

瑞紀さんは自宅で、リモートワークの事務をしています。

飯能に移住を決めてからは、主にネットで情報を集めていました。うれしいことに『はんのーと』も参考にしてくださったとか。

お茶畑だった土地に縁を感じた

山本さんご一家にとって、いまのお住まいがある土地には不思議な縁がありました。

実は瑞紀さんのご実家は静岡県のお茶農家。新居を建てると決めた土地は、もともとお茶畑だったそう。すてきな偶然に導かれて、家族四人の新たな生活が始まったのです。

家の中を案内していただくと、1階は吹き抜けのあるリビングとキッチン、2階に子ども部屋と夫婦の寝室、篤さんのリモートワークスペースがあります。

次にお庭と畑を見学させてもらいました。思わず「どこまでが山本さんの土地ですか?」と聞いてしまうほど、広々としています。

見上げれば青空が広がり、シートを敷いて寝ころびたくなるくらい開放感がありました。

今はまだ庭も畑も途中段階とのこと。篤さんが仕事の合間をぬって、庭を手づくりしています。畑には食べごろのブロッコリーが。

「自分で庭をつくりたくて動画を見ながら、見よう見まねでやっているのですが難しいですね。次の日には筋肉痛になりながら、楽しくやっています」と笑う篤さん。

移住してからは、庭にテントを張ってキャンプを楽しんだそう。自宅でキャンプができるなんて、贅沢ですね!

「最近は近所のお宅から野菜をいただくことも多くて、いずれは私たちもお裾分けができるくらい野菜を収穫したいです」と瑞紀さん。

いずれは友人を呼んで、庭でバーベキューもやりたいとのこと。ぜひ、われわれはんのーとライターもお呼ばれしたいです笑。

飯能の小学生に手話授業を開催

実際に移住してみて、ご夫婦それぞれに感じたことを伺いました。

「以前より、近所の人たちとの付き合いがあります。ある程度予想はしていましたが、思っていたよりも人と人との距離を近くに感じます。ぼくたちは耳が聞こえないので、多少大変なこともありますが、穏やかな方が多い印象です」と篤さん。

「わが家は、小・中学校が近くにあって助かっています。児童数は少ないですが、私たち自身もろう学校では、ずっと少人数のクラスにいました。雰囲気や様子はわかるので、安心感があります」と瑞紀さん。

移住後、篤さんはお子さんが通う小学校へ行き、児童たちの前で手話授業を行いました。

手話とは何かを伝え、耳が聞こえないとはどういうことなのか、子どもたちに理解を深めてもらう機会があったそうです。

篤さんは「飯能には、ろう者の方が結構いらっしゃると聞いています。自然な形で、耳に不自由がある人も地域に住んで暮らしていると知ってもらえたらと思います」と微笑みます。

日常生活ではコミュニケーションアプリを使って、誰とでもある程度の会話はできます。ろう者であっても、飯能は暮らしやすいと山本さんご夫妻は話していました。

篤さんの終始にこやかな笑顔と、瑞紀さんの落ち着いた雰囲気。お二人の取材がきっかけで、簡単な手話を勉強してみようかな、と思う飯塚でした。

写真:赤井恒平

関連情報

手話通訳
埼玉聴覚障害者情報センター

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記事を書いた人:
飯塚 まりな

イラストレーター兼ライター(主に人物取材を好む)。最近は愛車で過ごす車中ランチが生活の一部。夢は発展途上国で医療や教育に関わる日本人の取材。

2021年に働く30代男女の仕事や生活についてインタビューした『〜西武沿線上で探した〜近所の30代「今」何してる?』を全国の天狼院書店発売(2022年1月まで)。

  • 『ちいき新聞』レポーター(2020年〜)
  • 『ショッパー』レポーター(2019年〜)
  • 介護福祉士

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