たくさんのアーティスト、クリエ…
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特集・連載
飯能にアトリエを構えるアーティストを紹介する連載記事「飯能クリエイターファイル」。第12回目は書道家をご紹介します。
英語はたったの26文字で表現しますが、日本語はひらがな、カタカナ、漢字と無数の文字を扱うちょっと変わった言語です。また、漢字は一文字の中に意味を含んでいるのも特徴。
知れば知るほど面白くなっていくのが日本語の魅力です。そんな文字の魅力に取り憑かれ、文字を通して表現活動を行う書道家・山田麻子さんにお会いしてきました。
何をやってもいい、自由な書道
「お手本通りキレイに書くのが苦手なんです」
取材は意外な一言から始まりました。考えてみると自分が小学校で習ったものは、お手本通りに書く「習字」。一方「書道」は文字をキレイに書くのが目的ではなく、文字を通じて表現する世界なのです。
「せっかく生きているのなら、自分の経験したものをアウトプットしなきゃもったいない」
と語ってくれた山田さんは、その言葉通りコロナ禍以前は毎月一回は国内外のどこかで個展をしていました。2022年も1か月ほどニューヨークに出向き、4人展と壁画制作、マンハッタンでのグループ展も控えているなど精力的に活動されています。
表現方法も多彩で型破り。山田さんの作品は一枚の紙の中に文字を書くのではなく、紙という空間全てを使って表現しているのです。中には紙全体を墨で黒く染めているものもあったり、グラフィックデザインのようなものがあったり表現の幅が実に多彩。
私たちは「文字」だと思うと、どうしても読もうとしてしまいますが、一枚の絵のように楽しむのも書道の楽しみ方なのでは?と思わせてくれます。
書道との出会い、飯能との出会い
山田さんが初めて書道にふれたのは、実家近くのお寺で行われていた書道教室でした。しかし、そのときは書道が嫌いで、同じお寺で行われていた坐禅の方に興味を持っていたのだそう。
そして高校生になった山田さんは書道と出会い直します。きっかけは授業で書いた書を見た先生が「山田は天才だ!」と言ったことでした。
その先生は「思うままに一文字書いてみろ」と二畳ほどもある紙を用意してくれたのです。山田さんは辞書を開いて目に留まった文字を、全身全霊でその紙に書きました。そのときの爽快感は、今でも忘れられないのだそうです。
こうして自由な書道と出会った山田さんはデザインの専門学校へ。在学中からデザイン会社にも出入りし、カリグラフィーデザイナーとして仕事をスタートしようと試みます。
ところが、不思議なことに山田さんは「仕事」として文字を書くことができませんでした。悩んだ末にデザイナーを諦めた山田さんは、心機一転、当時住んでいた東村山から引っ越しをすることに。
不動産屋さんに物件の希望を伝えると「ご希望の物件は飯能にあるよ」と、予言めいたアドバイスが。こうして、山田さんは縁もゆかりもない飯能で書道家としてのキャリアをスタートするのです。
型にはまらない書道教室と、手書きのカレンダー
山田さんは個展以外にも書道教室とカレンダーの制作をされています。
書道教室は「NPO法人あおーら」にて月に一度開催していて「考えないで書く」「うまく書こうとしない」「墨だらけになってもいい」という山田さんらしさいっぱいの教室。残念ながらコロナ禍以降、思うように開催できていないのですが、再開を望む声が後を絶たないのだとか。
もう一つは、山田さんが一枚一枚手書きで仕上げる特別なカレンダー。季節を連想させる言葉を選んで制作しています。
通常のカレンダーは元になる文字を書いて印刷しますが、山田さんは全部自分で書き上げています。カレンダーを持っている人どうしが話をすると「うちのカレンダーの方がいい!」とカレンダー自慢が始まるのだとか。
多いときで400部ほど注文を受けていたのですが、全て手書きはかなり大変で最近は200部限定としています。カレンダーの予約は毎年11月末までとのことなので、ご興味ある方は下記の連絡先までどうぞ!
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