特集・連載

ライター:赤井 恒平

2025.10.27

飯能クリエイターファイル(No.29)ぬのきじや・山本いずみさん

飯能クリエイターファイル(No.29)
ぬのきじや・山本いずみさん

少しずつ知られてきているのですが、飯能はたくさんのアーティスト、クリエイターがアトリエを構えるまち。

本連載は、アートやクリエイティブの視点から、知られざる飯能の魅力を紐といていく企画です。

29回目は、オリジナルスタイルを扱っている「ぬのきじや」の山本いずみさんにお話を伺いました。

名前は直球、商品は変化球の個性派!

オリジナルデザインの布記事を取り扱っている「ぬのきじや」さん。うーん、なんとも直球でわかりやすいネーミングですね。

そんなシンプルな店名とは裏腹に、扱っている商品はとても個性的。ここにしかないデザインの布生地がズラリと並んでいます。

一番の売れ筋は「クマバーガー」。真顔のクマがハンバーガーに挟まっていたり、フライドポテトにまぎれていたり、炭酸ドリンクの中に潜水していたり。

シュールだけど、クスッと笑ってしまう面白いデザインです。

実はこのクマバーガーがあったからこそ、今の「ぬのきじや」が存在している。そう言っても過言ではないほど、大切なものだったのです。

受け継いだ柄と想い

「以前は生地ではなく、洋服をつくってオンラインで販売していたんです」と話すいずみさん。

「でも、私より技術が高い人もいたし、何より服をつくって販売している人が世の中にはたくさんいて。そうなると価格競争になってしまうので、悩んでいました」

そんなとき、とある人気の生地屋さんが閉業することになったそう。

大好きな柄が買えなくなるのは悲しい、と思ったいずみさんはダメもとでクマバーガーを自分に譲ってもらえないか、とお願いしてみたところ、まさかの快諾をいただきます。

そこから「ぬのきじや」としての活動が始まります。まずはつくってもらえる工場探し。

しかし、全国様々な工場を10軒ほどあたりましたが、なかなか個人事業レベルのロットを受けてくれる工場はありません。

ときには「今の時代に個人で生地屋さんを始めても、続けるのは難しいよ」という言葉もいただきながら、諦めずに探し続け、ついに大阪の工場で生産できることに。

そんな苦労のかいもあって、クマバーガーは「ぬのきじや」の看板商品になり、今では10種類ほどのデザインを取り扱う人気の生地屋さんとなったのです。

ちなみに、クマバーガーに並んで人気が高いのは、世界最古の猫とも言われている「マヌルネコ」の柄。

SNSで見つけたイラストレーターさんに「かわいい生地が見たい!」と依頼して生まれたデザインなのだそう。

他にも「ぬのきじや」ではレースやリボン、刺繍ワッペンなどを取り扱っています。

「なかなか表には出てこない、つくり手のこだわりや想いまで伝えたい」という、いずみさんのものづくりへの愛を感じます。

お客さんとの接点を増やすために

いずみさんのこだわりが詰まった商品たちは、オンラインショップはもちろん「くらしの循環センター・フカダヤ」内のショップで、手に取って実物を見ることができます。

「お客さんと直接会ってお話をするのが大好きなんです。だから、イベントにも積極的に出店してます。新作のご要望をいただいたり、前に購入してくれた生地でつくったものを見せてくれたりするとうれしいですね」

他にも、イベントでは活版印刷のワークショップも開催しているのだそう。ワークショップでは、自分の好きな柄を選んで活版印刷の機械を使って手作業で紙に印刷。

印刷したものは、もちろん持ち帰ることができます。どのような柄が布にプリントされるのか、想像しながらやるのも楽しそうですね。

お客さんの多くは子ども服だったり、ペット用の洋服をつくるために購入されるのだそう。販売は、50cm単位なので大型犬から小型犬まで、さまざまなサイズに対応できるのがうれしいポイント。

また、赤ちゃんの服なら製作まで行ってくれます。贈りものにいかがでしょうか。

最後に将来の野望を聞いてみました。

「いつか就労福祉の準備になるようなことがしたいです。縫製の職業訓練のようなイメージで。あとは、新しいデザインをもっとつくりたいですね。ただ、新しいデザインは先行投資大きいので、いつもビクビクしながらつくってます」

と金額の大きさに震えながらも、終始明るく話してくれたいずみさん。ぜひインスタをチェックして、イベントやフカダヤへ行ってみてください!

関連情報

店名
ぬのきじや
所在地
飯能市仲町6-11
くらしの循環センター・フカダヤ内
Instagram
@nunokijiya
HP
オンラインショップ

アクセス

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記事を書いた人:
赤井 恒平

飯能生まれ。AKAI FactoryやBookmarkを手がけた、飯能リノベーションの第一人者。地域や人をつなぐ「橋をかける仕事」をしています。

  • 飯能市キーマン
  • AKAI Factory 代表
  • 埼玉県「まちなかリノベ賞」最優秀賞(R2年度)

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