キャンバスに広がる、溶け合うよ…
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特集・連載
ライター:清水 麻由
2023.09.04
飯能クリエイターファイル(No.22)soeru craft・小針真菜実さん
飯能クリエイターファイル(No.22)
soeru craft・小針真菜実さん
ひと針ひと針、丁寧に仕上げられる刺繍。やわらかな風合いの紙に色とりどりの糸がほどこされ、洗練された存在感を放っています。
刺繍といえば布へ行うのが一般的ですが、soeru craft(ソエルクラフト)の小針真菜実(こばりまなみ)さんは、紙へ刺繍をする作家さんです。
大好きな「紙」を生かした作品づくり
「紙が好きなんです」と小針さん。紙を使って作品をつくりたいと、ものづくりを始めた頃は漠然と思っていたそう。
「イラストを描いたりデザインをするのも好きで。紙刺繍にたどり着くまで、いろいろ試してきました」
紙刺繍を知ったのは、昔友人と参加したワークショップだったとか。
しばらく経ったあるとき、友人から「子どもへの手紙を収納できるアルバムをつくって欲しい」と頼まれたのをきっかけに、本腰を入れて紙刺繍に取り組みます。
「紙と糸の組み合わせは一見すると異素材感がありますが、本をつくるときに糸を使う技法は昔からあって。その相性のよさにどんどんハマっていきました」
小針さんが使用する糸は、刺繍糸ではなく手縫い糸。「刺繍糸のモコモコした感じもかわいいのですが、自分のテイストとして線をしっかり出せるような糸を選んでいます」
線が極端にズレてしまわないように方眼紙にデザインするのが小針さん流。デザインを決め、紙に目打ちで穴を開けてから縫い針で糸を通していきます。
点で描くとまとまっていたものが、糸を通すと思ったものと違ったりと、難しいところもあるそう。「でも出来上がりを想像しながらつくるのは楽しいです」と小針さん。
soeru craftの人気作品のひとつ、紙のガーベラは花びら一枚一枚を紙から切り抜いてつくられています。
紙刺繍とペーパーフラワー。小針さんとしては、そのジャンルの技法を突き詰めるというよりも、自分の世界観やオーダーしてくれた方の想いを再現してくれるものとして「紙での表現」を選んでいるそうです。
「ものづくりが好きという気持ちが誰かの役に立ったらいいな、というところが始まり。いろいろ挑戦しつつもそこはブレずに大事にしています」
贈る人から贈られる人へつながるストーリー
刺繍=布というイメージから「これ刺繍なの?」とお客さんに驚かれることも多いと言います。その際に、紙刺繍の新鮮さやワクワク感をお伝えすると喜ばれるそう。
平日は飯能銀座商店街のフカダヤのアトリエで、週末は市内外のイベントで展示販売をしている小針さん。オンラインでも販売されていますが、実物に手にとってみるとさらに紙刺繍の魅力が伝わってきます。
「メッセージカードなどは『送ったあとも楽しめる』をテーマにつくっています。届いた先でいろんな活かし方をしてもらえたらよいなと思います」
季節のものや植物など、モチーフも様々。「永遠」を意味するリースがあしらわれた小箱「ソエルハコ」など、ストーリーを感じる作風が魅力です。
これから挑戦したいことをお聞きしました。
「小物を中心につくっているので、大きいものもやってみたいです」紙だからこそずっと残せるものとして、ウェディングアイテムやアクセサリーも考えているそう。
極端な湿気には弱いなど、繊細さもある紙素材ですが、小針さんは試行錯誤しながらも常に新しい紙の活かし方を模索しています。
「添える」という言葉からつけられた、soeru craft。想いを添えて、気持ちに寄り添う。大切な人や自分への贈り物にいかがでしょうか。
写真:赤井恒平
関連情報
- 店名
- soeru craft
- アトリエ
- 飯能市仲町6-11
くらしの循環センター「フカダヤ」内
- 営業時間
- 11:00〜17:00(月曜定休)
※オーダーなどのご相談は、火曜〜木曜
- @soeru_craft
アクセス
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記事を書いた人:
清水 麻由
飯能周辺のイベントに出没しては、消しゴムはんこなどを彫る人。造形屋。自由人の夫&息子とゆるくて愉快な飯能ライフを送っています(飯能市内で広いおうち探してます)。
- アート・クラフト屋イワオカフェ
- くらしの修繕センター・イワオヤ
- ウッドターニング(木工旋盤)修行中
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