誰にでも開けた場所にしたかった…
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移住先として根強い人気を誇る埼玉県飯能市。駅からすこし離れれば、広々とした土地にこだわりの一軒家を建てられるのが最大の魅力です。
せっかく家を建てるなら、デザインはもちろん性能にもこだわりたいところ。そこで、今回は高気密・高断熱住宅を専門に設計している若手建築家、薄井隆生さんにお話を聞いてみました。
日本の住宅性能について、目から鱗の話が満載。これから家を建てる方は必見です。
冬でも18度以上を保てる温かい家、あります
小春日和。寒い季節にふと訪れる春のように、暖かな日のことを日本ではそう呼びます。
その心地よさを住宅に取り入れ、一年を通して快適な環境をつくり上げているのが、設計事務所Koharubi-labの薄井隆生さん。
なんと、薄井さんの設計する住宅は冬でも18度を下回らない高性能住宅なのだそう。築50年超えの木造平屋に住んでいた私にとって、冬寒いのは当たり前。
寝るときは顔がキンキンに冷え、朝起きてまず最初にすることは石油ストーブのスイッチを入れる、というのが常識です。本当にそんな家があるんでしょうか?
「昔の家は夏を基準に考えて設計されていました。今は素材や換気システムの性能も上がったので、冬でも暖かい家がつくれるんです。とはいえ、素材の断熱性能では分かりにくいので、koharubi-labでは実際に何度の室温で生活できるか、を提案しています」
と、静かに語ってくれる薄井さん。断熱や気密性のについて、もうすこし詳しく教えてください!
日本の断熱は、50年遅れてる!?
冬でもエアコンなしで18度なんて、超最先端の技術と素材を使える日本ならではの住宅ですね。
「それが、実は日本の省エネ基準は20年間変わっていなくて、世界と比べると大きく遅れているんです。すでにWHOの基準は18度を下回ってはいけない、となっていますが、日本は2025年の改正でようやく13度を下回らないようになるレベルです。イギリスでは16度を下回る住宅は取り壊しになるんですよ」
ヨーロッパはもちろん、中国や韓国にも追いついていない日本の住宅性能。そんな中、薄井さんはどうして高性能住宅の設計をしようと思ったのでしょう?
「以前、工務店で設計の仕事をしていた頃、自分が設計した住宅の竣工検査で家の中に入ったら、厚手の靴下を履いてても指先が冷たくなるくらい寒かったんです」
「そのとき断熱や気密性の重要性を身をもって感じたんですが、高性能住宅はまだまだニッチな部類で、なかなか勉強する場がありませんでした。そしてその分野に強い工務店を探し出し、7年ほど勉強させてもらって2022年に独立しました」
最近は設計を依頼するお客さん側から、断熱についての要望が変わってきたと話してくれた薄井さん。
小春日和のような家が当たり前となるよう、すこしずつ高性能住宅を広めていくのが今後の夢なのだそうです。都心に比べて寒さが厳しい飯能の救世主になってくれるかもしれませんね。
ところで、なぜ飯能へ?
薄井さんが飯能に引っ越してきたのは3年ほど前。もともと埼玉の西側に縁があったこともあり、そのエリアで探していました。
地図を見ながら西武線をなぞっていくと、ちょうど山が始まるあたりにあったのが飯能だったのです。
都心のエリアに打ち合わせに行くのも楽だし、なにより趣味の山登りができる!ということで即決。そして、商店街にあるシェアオフィスBookmarkに入居することに。
「シェアオフィスで働いてみてどうですか?」と聞くと「今まで接点のなかった他業種の人たちと交流することでビジネスの幅が広がっている」とのこと。
持ち前の集中力と柔らかい物腰は、確かにシェアオフィス向きかもしれません。
ただ、お話を聞いていて一点だけどうしても気になることがありました。それは、Bookmarkは断熱性能が極端に低いのです。高性能住宅を扱うのにこのオフィスでも大丈夫でしょうか?
「確かに冬は寒いですが、そのおかげで高気密・高断熱の重要性を再認識できますよ」と笑って答えてくれた薄井さん。なんてステキな人なんでしょう。
寒さの苦手な方は、ぜひ薄井さんに相談してみることをおすすめします。
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記事を書いた人:
赤井 恒平
飯能生まれ。AKAI FactoryやBookmarkを手がけた、飯能リノベーションの第一人者。地域や人をつなぐ「橋をかける仕事」をしています。
- 飯能市キーマン
- AKAI Factory 代表
- 埼玉県「まちなかリノベ賞」最優秀賞(R2年度)
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