静かな田舎に引っ越して、広々と…
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自然素材の家、自然体の暮らし
若手建築家一人目は、飯能に事務所を構える「設計室en」の小野和良さんです。取材依頼をしたとき、ちょうど引き渡し直前の物件があるということで、見学させていただくことができました。
新築だけど、どこか懐かしさを感じる家。それがこの家に入った時の第一印象でした。家の中心には棟木(むなぎ)まで伸びる栗の大黒柱があり、複雑に組まれた梁を支えています。
南側はひさしがあり、大きなガラス戸から直射日光が入らず季節感を感じさせながらも快適さを保っています。これは小野さんが「日本の気候には日本古来の木造住宅が合っている」という考え方をベースに設計しているから。
そんな、小野さんが目指しているのはできるだけエアコンを使わない生活。その言葉通り、リビングに立つとどこからともなく心地よい風が吹き抜けていきます。
取材時は初夏でしたがまったく暑さを感じません。これはマンションでは体験できない感覚です。この「風通し」を生み出すために窓の数、方角などを考えることで、自然と共に暮らすようなライフスタイルを実現させているのです。
小野さんが家づくりに使うのは「自然素材」。杉やヒノキなどの無垢材をメインに、ビニールなどの化学物質を含んだ素材を極力使いません。さらに木材はできるだけその地域で育ったものを選びます。そうすることで、輸送にかかるエネルギーを削減することができ、地球へ負荷をかけない家づくりができるのです。
小野さんのもう一つの特徴が物語を大切にするということ。例えば、施主が東北の出身だったら大黒柱に東北の材を使ったり、敷地の周辺に大きな栗の木があったらその方向に窓を設けてその土地本来の景色を借景にしたり。そうしてつくられた家は、壁や窓で区切られてはいるけれど、素材・風景・空気という深いところで土地と人をつなげているのです。
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記事を書いた人:
赤井 恒平
飯能生まれ。AKAI FactoryやBookmarkを手がけた、飯能リノベーションの第一人者。地域や人をつなぐ「橋をかける仕事」をしています。
- 飯能市キーマン
- AKAI Factory 代表
- 埼玉県「まちなかリノベ賞」最優秀賞(R2年度)
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