あそぶ

ライター:清水 麻由

2022.12.13

美味しくて楽しいみんなのスペース「きまぐれ駄菓子屋」

美味しくて楽しいみんなのスペース
「きまぐれ駄菓子屋」

あるとき「飯能で大学生が駄菓子屋さんを始めたらしい」という情報が入ってきました。

その昔、祖母が駄菓子屋をやっていたこともあり、駄菓子には思い出いっぱいのライター清水。大学生がどんな想いで始めた駄菓子屋さんなのか、取材させていただきました。

子どもたちの居場所としての駄菓子屋さん

きまぐれ駄菓子屋は、双柳小学校近くの住宅地にあります。

家々の並びにありますが、ひと目見てお店だとわかる雰囲気。それもそのはず、コロナ禍前までここは文房具屋さんだったそう。

「オーナーさんが高齢になり、お店をたたむと聞いてお借りすることになったんです」そう話してくれたのは、同じ地区に生まれ育った粕谷彩葉(さよ)さん。

きまぐれ駄菓子屋を運営する一般社団法人カプリチョーソの代表で、現役の大学生です。

高校からの友人である木村美卯(みう)さん、幼なじみの熊坂汐莉(しおり)さんと3人で始めたというきまぐれ駄菓子屋。どんな場所なのでしょうか?

「友人と、子どもの居場所になるようなところをやりたいね、と話していたんです」と彩葉さん。

以前から二子玉川で、不登校の子どもの支援をしているNPO団体にサポートしてもらいながら、不定期のイベントという形で活動をしていたそう。

そんな経験を経て「ここに来たら私たちがいるよ!」と言える場所を持てたら…という気持ちが固まります。

地域の大人や子どもたちのお手伝いもあり、まちの文具店は今年10月、誰でも気軽に来てもらえる駄菓子屋として生まれ変わりました。

とはいえ駄菓子の販売ではほとんど利益は出ないそう。助成金などもないため、今は活動に賛同してくれる方からの寄付と、スタッフの自己負担で家賃等をまかなっていると言います。

「大学生のバイト代がつぎ込まれている場所になります」と彩葉さんは笑います。

休日とアルバイト代とを費やしている、きまぐれ駄菓子屋。生半可な気持ちではできないことです。

家でも学校でもない、第3の場所

子どものための居場所が必要だと考えたきっかけのひとつに、中学校での体験があったと言います。

「あるとき駅伝の選手に選ばれてしまって。やりたくなくても辞退できない風潮や、体育の先生の指導などに違和感がありながら、まだ子どもだし、世の中のこともわからないので辛くても我慢しました。でもその後、飯能を出て入学した高校の体育がびっくりするくらいゆるくて(笑)」

もはやカルチャーショックでした、と彩葉さん。同じ体育の先生でもいろいろな人がいることに驚いたそうです。

「ああいう人もいれば、こういう人もいる。理不尽な大人にしか出会っていない子どもたちはきっと辛い思いをしている。それで世の中の大人に期待しないようになるのはもったいないことだと思いました」

「期待してもいい大人は案外いるんだよ!と伝えたい」そう話してくれました。

都内から飯能へ通って、きまぐれ駄菓子屋を切り盛りしている美卯さん。

彩葉さんに声をかけられたときは面白そうかなー、と軽い気持ちで始めたそうですが、活動するうちに感じたことが。

「特別何かあるわけではなくても、家がなんとなく落ち着かなかったり、学校では気を張ってしまうことってあると思います。そんなとき、ふらっと立ち寄れる場所があったらいいな、と考えるようになりました」

もちろん駄菓子屋さんとしての豊富な品揃えも、きまぐれ駄菓子屋の魅力。大人にとっては懐かしいものから最新の駄菓子まであって、何を買おうか迷ってしまいます。

オープン日は、小学生や小さな子を連れたお母さんたちで賑わうそう。

地域の方々から譲り受けた本もたくさんあり、誰でも自由に読むことができます。みんなで楽しめるボードゲームや工作用品なども。

「英語や漢字検定の本、赤本もあるので中高生はぜひ勉強しに来てください」とのこと。

「話したかったら話し相手に、遊びたかったら遊び相手にもなります!」彩葉さん美卯さんはニコニコと声をそろえます。

親や先生とも違う、年齢の近い大人が見守ってくれる場所。子どもたちにとって居心地がよい空間に違いありません。

駄菓子屋だからこそできる「つながり」

ふとお店の入り口を見ると「100円」と書かれた小さなメモがボードに貼ってありました。

「これは大人にチケットを買っておいてもらって、子どもがそれを使って駄菓子を買えるという仕組みなんです」

ある男の子のグループが来たときに、1人の子だけ駄菓子を買うおこづかいがなく、しょんぼり…ということがあったそう。

「おごってあげたいけれど、お店側の私たちが特定の子だけにおごることはできない。じゃあ誰か他の大人が…と思ってもその場にいないと難しい。いなくてもおごってあげるにはどうしたらいいか考えたんです」

そこで生まれたのが、つながるチケット。大人から子どもたちへ、メッセージとともに「駄菓子を楽しんでね」という気持ちを伝える、小さなギフトです。

「飯能でこの仕組みが流行ってくれたらいいな」と彩葉さん。私も一枚書かせていただきました。誰か使ってくれるかな?

※そのしょんぼりしていた子には、お店のお手伝いをしてもらい、お駄賃として駄菓子を渡してあげたそうです。

飯能に移住するきっかけにもなってほしい

最後に今後の目標をお聞きしました。

「『子どもたちの居場所』が、飯能の魅力のひとつになってほしいと思います。他の団体とも話しているのですが、月31日ある中でどこかしらが空いている状況になればいいなと考えています」

同じような活動をしている人たちと一緒に、イベント開催やマップづくりもしたいそう。

「もし子どもが学校になじめなかったり、親が仕事で遅くなっても、飯能ならこういう場所があるんだ!と飯能への移住の決め手になれば」

飯能の未来をも見据えた、心強い言葉です。

「何か困ったことがあったとき、思い出してもらえる顔のひとつになれたらいいよね」と笑顔で話す彩葉さんたちの飯能での活動は、始まったばかり。

それでもすでに地域の人々を魅了し、飯能に新しいムーブメントを起こし始めているようです。

現在、寄付はもちろん子どもたちと遊んでくれる人、お店番をしてくれる人などボランティアも絶賛募集中とのこと。ご興味のある方はぜひ!

関連情報

店名
きまぐれ駄菓子屋
所在地
飯能市双柳1214-3
「双柳中央」バス停すぐ
双柳小学校から徒歩3分
営業時間
毎週日曜 10:00〜17:00
駐車場
なし
HP
https://sites.google.com/view/capriccioso/
メール
capriccioco.info@gmail.com
Instagram
@capriccioso_kimagure
Facebook
@capriccioso.kimagureni
Twitter
@capriccioso_sk

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記事を書いた人:
清水 麻由

飯能周辺のイベントに出没しては、消しゴムはんこなどを彫る人。造形屋。自由人の夫&息子とゆるくて愉快な飯能ライフを送っています(飯能市内で広いおうち探してます)。

  • アート・クラフト屋イワオカフェ
  • くらしの修繕センター・イワオヤ
  • ウッドターニング(木工旋盤)修行中

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