くらし

ライター:つるまゆ

2023.05.21

環境保全への熱い想いから生まれた酒造会社「やまね酒造」

環境保全への熱い想いから生まれた
酒造会社「やまね酒造」

原市場(赤沢)地区を拠点に酒造りを展開している「やまね酒造」。令和元年に創業した酒造会社です。飯能の豊かな森と入間川の清らかな水でつくられたクラフトサケがあると聞いて、さっそく取材に伺いました。

飯能産にこだわって

約束の時間に目的地へたどり着くと、そこは元コンビニの跡地。「コンビニの建物って、実は活用範囲が広いんですよ」

蔵元の若林さんに案内されて建物に入ると、中はお酒の芳醇な香りでいっぱい。酒造りに欠かせない麹の出麹作業中ということで、麹室を見せていただきました。

真っ白に粉がふいている麹を優しい手つきで混ぜ合わせているのは、若林さんとともに酒造りに関わる深堀さん。麹を一口いただくと、栗のような香りとほのかな甘さを感じました。

米は飯能産の「彩のきずな」や、無農薬栽培米の「りくう」を使うなど、米にもこだわっています。

まだ新しさの残る木製の道具はすべて西川材とのこと。麹箱や蒸籠などはすべて「きまま工房 木楽里」に製作を依頼しています。

酒の味を決める木桶は、香川県小豆島まで西川材を送り、木桶職人につくっていただくという、こだわり抜いたもの。入手しやすく、扱いも手軽なステンレスタンクではありません。

「木桶という発酵容器は、日本の発酵文化を脈々と伝えてきた道具です。酒蔵で使われた木桶は、醤油、味噌づくりに転用され、最後は自然に戻っていきます。これこそ、究極のリサイクルですよね」

コンビニ営業時はドリンクが並んでいたであろう冷蔵庫には、今まさに発酵中の木桶が並んでいます。蓋を開けると、まるで青リンゴのようなフルーティーな香りが漂いました。

若林さん曰く「天然素材の木桶を使うことで、仕込むたびに香りや味の変化が生まれてくる」とのこと。

「木桶が微生物の働きを助けているんです。前回はバナナのような香りがしましたよ」これは……仕込みごとに味わってみたくなるパターンではないですか。

生物多様性が残る飯能

秋田屈指の名醸蔵「新政酒造」で修行を積んだ若林さんですが、その活動は酒造りにとどまりません。

環境保全活動を企業理念に掲げ、インバウンドを見すえた酒造り体験事業や民泊事業やエコツアーの企画、そして、生物多様性の調査・研究活動の運営など、多岐にわたる企画に注力しています。

酒造名の「やまね」も、研究対象の1つです。体長約10cmの哺乳類で、日本の固有種として古くから生息しています。

飯能は、国の天然記念物にも指定されているニホンヤマネの貴重な生息地域。若林さんは、ニホンヤマネの生息環境を維持し続けることが、自然環境全体を守っていくことにつながると話します。

「木桶に使っている木材も、酵母も、やまねも、すべてが大きな自然のサイクルの中で活動しています。自然とうまく共存してきた日本文化を、そして生物多様性が残る、この飯能をもっと多くの人に知ってもらいたい。それが私の活動の原点です」

まっすぐな視線で淀みなく語る若林さんに、目標を一歩ずつ叶えていく力強さを感じました。

やまね酒造の商品は、ホームページのほか、発酵のテーマパーク「OH!!!〜発酵、健康、食の魔法!!!~」で購入できます。飯能市内の居酒屋「厨房酒場 長門や」等でもお味見できるそうなので、気になった方はぜひ!

写真:赤井恒平

関連情報

名称
やまね酒造 赤沢醸造所
所在地
埼玉県飯能市赤沢223
営業日
不定期
(直売店の営業はHP、Twitterにて)
営業時間
11:00〜16:00
HP
https://yamaneshuzo.jp/
Twitter
@yamaneshuzo

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記事を書いた人:
つるまゆ

長野県上田育ち→東京経由→埼玉県飯能暮らし/自然に囲まれた生活を愛して、2021年に移住/山と緑、自然食と手仕事、コーヒーを楽しむ生活

  • 職業は経理&ライター
  • 登山大好き
  • 和服大好き

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