山々に囲まれた名栗にできた、小…
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たべる
飯能市双柳(なみやなぎ)の住宅地の一角に、アンティークな雰囲気が魅力の小さなお店があります。
今年の6月30日にオープンした、フランス菓子とオーダーケーキの専門店「吉川製作所」です。
洋菓子屋さんとしては渋さのあるネーミングの「吉川製作所」。店頭のそばには、年季の入った吉川製作所の木箱もあります。新しいお店なのになぜ?
「祖父の代から続いていた墨田区の工場を閉めることになり、名前を引き継いだんです」
お話を伺ったのは、店主の吉川鮎美さん。
3年ほど前、イベント出店をするにあたって店名を考えていたと言う鮎美さん。
「なんとなく横文字はしっくりこなくて。工場の雰囲気も好きだったので『吉川製作所』という名前を使わせてもらうことになりました」
お店のコンセプトは「古きよきものを残していくこと」そして「コツコツと丁寧に仕事をすること」
真鍮でベルトなどの部品を製造していたというお祖父様の町工場。その名と仕事への誠実さを受け継ぐ、新たな「吉川製作所」なのです。
伝統的につくられてきたお菓子へのこだわり
現在、お店では12種類ほどの焼き菓子を販売。「昔から続いているような、伝統的なフランス菓子に焦点を当ててつくっています」
特に人気の商品は「カヌレ」と「キャラメルケーキ」
キャラメルケーキづくりには分離しやすい難しい工程があるそうですが、時間をかけてゆっくりと丁寧に行うそう。
きめ細やかでしっとりとした口あたりが絶品です◎
特に「香り」を大切にしているという鮎美さんの焼き菓子。マドレーヌのレモンの香りや、フロランタンのオレンジの香りなど、素材の風味を最大限に活かしています。
フランス菓子と飯能産の食材とのマリアージュ
お菓子に地元の食材を掛け合わせるのが、鮎美さんのお菓子づくりのテーマ。
「フランスの伝統菓子に、どう飯能の食材を合わせるかを考えるのが楽しいんです」
小政園の狭山茶パウダーを使ったクッキーもそのひとつ。味が濃く、きれいな緑色が出るのだとか。
狭山茶パウダーを買いに行くとお茶の粉まみれだったりするご主人の、フレンドリーで楽しいお人柄も魅力で、ついつい通ってしまうと言います。
同じ双柳地区にあるマキノキ園さんのフルーツも使っています。ぶどうなどがとてもジューシーとのこと。
「お茶もフルーツも、手にするとみなさんが丁寧につくられた食材なのがわかるので、それを感じながら私も丁寧さを心がけています」
みんなが笑顔になるオーダーケーキ
吉川製作所のオーダーケーキも人気です。鮎美さん自身は生ケーキを食べるのがそれほど得意ではないそうですが、だからこその工夫が。
「ペロっと食べていただけるように、当日スポンジを焼いてフワフワのまま、口溶けのよいようにクリームをサンドしています」
その食感に驚かれるお客さんもいるそう。
写真提供:吉川製作所
以前のお勤め先でウェディングケーキなどを手がけたこともある鮎美さん。華やかなフルーツのデコレーションはお祝いにぴったりです。
チョコプレートやアイシングクッキーの飾りを施した、かわいらしいケーキも。
写真提供:吉川製作所
「お渡しの際にでき上がりを確認していただくのですが、喜んでくださると『やったー!頑張ってよかったー!』って。心の中でガッツポーズしています笑」
お渡しする日はずっとドキドキしているという鮎美さん。心を込めてつくってもらえるケーキは、お祝いでなくてもオーダーしたくなりますね。
誕生日や記念日はもちろん、シンプルに吉川製作所のデコレーションケーキを食べたい!という方も大歓迎とのこと。InstagramのDMか店頭でぜひご相談を。
小さなお菓子職人の誕生秘話
子どもの頃から、暇さえあればお菓子をつくっていたという鮎美さん。焼き菓子づくりとの運命的な出会いは意外なところから。
「最初、たこ焼きがつくりたかったんです。それで買ってもらった子ども向けの料理本にお菓子が載っていて。そっちにハマってしまいました」
本に載っていたクッキーを何回も何回もつくったといいます。
「いま思うと、それがよかったように思います」
今日はバターやわらかくしすぎたな、とか硬いとなかなかできないな、など。同じレシピを繰り返しつくることで、感覚を培っていきました。
「子ども向けの基本的なレシピだったからこそ、違いがわかったのかも知れませんね」と鮎美さんは振り返ります。
自分のお店を持って
製菓学校へ進み、卒業後は所沢にある「お菓子工房エミール」というお店に6年ほど勤めていた鮎美さん。
その後、代官山のフレンチレストランで働き、結婚を機に元加治へ。妊娠中にはエミールに戻ります。
「それがすごくリフレッシュになって。そのときに、子育てに集中するのもいいけれど、やっぱり私はずっとお菓子づくりに携わっていたいなと思ったんです」
その後、お子さんが生まれて現在の場所へ家を建てる際、お店の場所は計画してあったそう。
「その頃は友人にケーキをつくるくらいしかしていなかったのですが、みんながお店を『やりなよ!やりなよ!』と後押ししてくれました」
ご近所さんも家族ぐるみで仲がよく、気にかけてくれてお店もやりやすいのだとか。
小学生のお子さんが2人いる鮎美さん。飯能で同じように子育てしながら活動しているお母さんたちに、イベントなどを通して出会えるのも刺激になると言います。
「自分のお店を持って、地域や人とのつながりが、より強くなったと感じています」
年明けには敷地内にさらなる新店舗がオープン予定だとか。現在お家のテラスがあるところがお店になって、店内にも入れる形になるそうです。
入間で場所を借りてつくっていたお菓子も、これからはご自分の工房で焼けるようになります。
「その日その日で、焼き上がるお菓子の表情って違うんです」
取材中、ずっとお菓子の話をにこにことうれしそうにお話しくださった鮎美さん。
オーブンをのぞいてるのが好きだと言う鮎美さんの笑顔は、きっとクッキーを何度も焼いていた子どもの頃から変わっていないに違いありません。
一つひとつ丁寧に、大切につくられたお菓子をぜひご賞味ください。
※時期によって販売されるお菓子の種類は変わります。
関連情報
- 店名
- 吉川製作所
- 所在地
- 飯能市双柳1177−5
- 営業日
- 火・金・土・日を中心に営業
(不定期のため最新の営業日はInstagramにて)
- @yoshikawa_seisakujyo
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記事を書いた人:
清水 麻由
飯能周辺のイベントに出没しては、消しゴムはんこなどを彫る人。造形屋。自由人の夫&息子とゆるくて愉快な飯能ライフを送っています(飯能市内で広いおうち探してます)。
- アート・クラフト屋イワオカフェ
- くらしの修繕センター・イワオヤ
- ウッドターニング(木工旋盤)修行中
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