山々に囲まれた名栗にできた、小…
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ドーナツの思い出ってありますか?
絵本や小説、なそなぞ「真ん中は食べられないお菓子ってなーんだ?」でもおなじみ、みんな大好きドーナツ。
ふわふわだったり、もっちりだったり、サクサクだったり。食べると幸せな気持ちになるお菓子の一つではないでしょうか。
美味しいドーナツは正義!ということで訪れたのは、2023年12月にオープンしたドーナツのお店、飯能の名栗地区にある「輪ぐりや」さんです。

古民家とドーナツ、再生と誕生
名栗の自然に囲まれた、懐かしさを感じる佇まい。引き戸を開けると、和の風情とモダンさが調和した空間が広がります。

お店の奥にあるショーケースには、こんがりきつね色をしたシンプルなドーナツから、チョコやグレーズで素敵にお化粧されたものまで、目にも美味しいドーナツが並んでいます。

笑顔で迎えてくれたのは店主の清水えり子さん。大きな窓からの光が心地よいカウンター席でお話を伺いました。

昔は民宿や小さなタバコ屋だったこともあるという築110年の古民家を、大工さんであるえり子さんのご主人が改装。
年月を経て醸し出される、古い建物の味わいを活かしたお店へと生まれ変わりました。
大工仕事でお世話になっていた、この古民家の大家さんでもある根古屋建設株式会社さんから、家を解体する予定があることを聞いたご主人。
「私に『もったいないからお店にしたら?』と提案してくれたんです。じゃあ改装してくれる?って(笑)」

「いつか何かの形でお店をやりたいとずっと思っていた」と言うえり子さん。
これまで栄養士として病院や高齢者施設、保育園などで、長きにわたって献立づくりや調理を担当してきたそうです。
縁の下の力持ちとして施設を支える大変なお仕事ですが、食べる人の様子が見えにくく、直接美味しいと言ってもらえる場面は少なかったと言います。
いつか「食べてくれる人の顔が見えるようなお店をやりたい」と思うようになったそう。

「ランチを出すお店なのか、お菓子屋さんなのかは決まっていなくて。主人の後押しでお店をやろうとなって『ドーナツなら何とかなるかな?』という軽い気持ちで始めました」と笑うえり子さん。
「保育園でおやつをつくっていた頃に、ドーナツを食べた子どもたちが『えりこせんせい!このドーナツ美味しいー!』って言ってくれたんです。それがすごくうれしくて、このレシピでいってみようって」
何度かイベントでドーナツを販売してみたところ、お客さんの反応もよかったそう。
でもオープンして最初の一年は、試行錯誤の連続。全てに追われていたと言います。
「オープン当初は1ヶ月ごとに限定メニューを変える予定だったのですが『お客さんが飽きてしまうのでは?』と1週間か2週間でメニューを変えていたんです」
あの時は苦しかったなぁ、と苦笑いのえり子さん。
現在、ドーナツは常時8種類くらい。季節限定のものが加わる際には10種ほどになることもあるそうです。

自然体だからこそ生まれる美味しさ
ドーナツのこだわりを伺うと「素材になるべく国産のものを使うことくらいです」とのこと。
「自分が好きなものを出しています。例えばチョコレートのコーティングは、チェーン店にあるような口に残る感じのものが苦手で。口の中で溶けるような、カカオ多めのものにしています」
甘すぎず、小さな子には苦すぎず。カカオ72%と60%のチョコレートを組み合わせて、絶妙なバランスの甘さに仕上げているとのこと。ちなみに正確に何%になっているかはわからないそうです(笑)。

「こだわり過ぎて値段を上げたくはないんです。できるだけ手頃な値段でやりたいというのがずっとあって。本当は子どもたちが100円を持って『ドーナツ買いにきたよ〜』というのがいいなあと思っています」
それを叶えるべく、地域のお祭りで駄菓子感覚で買えるようなミニサイズのドーナツを出したこともあるそう。楽しいお祭りのひと場面が目に浮かぶようです。
まほら屋さんの蜂蜜や、小牧園さんの狭山茶を使ったドーナツ、イートインでドーナツに添えることのできる古民家ひらぬまさんのジェラートなど、飯能の名産品も使われています。

コラボされているんですか?と聞いてみると、ちょっと驚いた様子のえり子さん。そういったことは何も考えていなかった、と言います。
「給食などで献立を立てるときは地産地消、つまりできるだけ地のものを使う、ということが身についていたので、無意識のうちに身近なものを使っているんだと思います」
生産者さんとは子育てや消防団などでつながりがあったりと、意識的にではなく自然な流れでできたご縁なのだとか。自然体なえり子さんのお人柄が伝わってきます。

3人姉妹のお母さんでもあるえり子さん。
「同じように飯能でお店をやっている子育て世代の方と『大変だけど頑張ろうね!』と励まし合ったりしています」
そうだ、輪ぐりやへ行こう
輪ぐりやさんは、えり子さんとご主人のお姉さん、お二人で切り盛りしています。

店内にはドーナツだけでなく、ご縁のあった作家さんのハンドメイド雑貨も並んでいます。時期になると旬の野菜も。
「ドーナツを買わなくても、お散歩やお出かけがてら立ち寄って休憩できるような場所になったらいいなと思っています。『小さな道の駅』みたいな存在になれたら」

将来的にはお店のスペースでのワークショップや、2階を改装してヨガ教室もやってみたいそうです。
小さな子どもからお年寄りまで、いろいろな層のお客さんが訪れる輪ぐりやさん。
地元の方どうしが小上がりでのんびり思い出話をしたりしているとうれしい、と言います。

「本当にお客さんが来てくれるだけでうれしいんです。『美味しかったよ』って言ってもらえることで活力をもらったりもしています」
ドーナツの「輪」と「名栗」、古民家に元々あった屋号「いずみや」から名付けたという「輪ぐりや」。
その「輪」の中には、人が集まって大きなあったかい輪になったらいいな、という想いも込められています。

ある常連さんが病気をしてしばらく姿が見えなかったことがあったそうですが、元気になってまた来店してくれたのだとか。
美味しいドーナツと心地よい空間、そしてえり子さんの明るい笑顔を思い出して、ふと行きたくなる。そんな場所なのかもしれません。
フワフワもっちり、サクサクほろり。甘い香りと食感が美味しくて楽しい、輪ぐりやさんのドーナツ。

まあるい「輪」がつなぐ幸せな時間を過ごしに、何度でも訪れたくなるお店です。
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