たべる

ライター:赤井 恒平

2026.09.10

消費期限はたった一日。100年続く銘菓「四里餅」の秘密

消費期限はたった一日。
100年続く銘菓「四里餅」の秘密

飯能を代表するお菓子の一つ「四里餅(しりもち)」。地元では知らない人はいないほど有名ですが、意外に市外の人は知らなかったり。

知ってたけど食べたことはないという声も聞く、そんな一品です。

四里餅がどんな食べものかというと、あんこを餅で包んだ小判型の大福です。これ以上の説明が難しいシンプルなものです。

これが素直に美味しい。持ち上げると形が変わってしまうほどやわらかい餅、しっとりとしたあんこ、そしてほんのり感じる塩気。

大きさもちょうどよく、つい「もう一個」と手がのびてしまいます。

そして、最大の特徴が「消費期限本日中」ということ。箱にしまっても、冷蔵庫に入れても、次の日には硬くなってしまうのです。

なので、食べられるのは飯能へ来た人と、タイミングよくお土産でもらった人だけ。

仕事や観光で来飯された人で「今日は四里餅買えました!」とうれしそうに報告してくれるほど、レア度の高い飯能土産なのです。

美味しさの秘密を探しに、大里屋本店へ

飯能駅から車で10分ちょっと。四里餅を製造・販売している大里屋(おおさとや)本店にお邪魔してきました。

優しい笑顔で迎えてくださったのは、代表取締役の宿谷雅啓さん。さっそく四里餅がつくられる現場に案内していただきました。

「では、つくっていきますね」 白一色の作業着に着替えた宿谷さんが、蒸しあがったお米を取り出します。

え?社長がご自身でつくられているのでしょうか?

「はい、製造工程は私一人で行っています。焼印や箱詰めは手伝ってもらいますが」

蒸気で眼鏡を真っ白にしながら話してくれる宿谷さん。飯能を代表する銘菓をお一人でつくられているとは驚きです…。

「釣りが趣味なのですが、出かける前に家族から『絶対にケガしちゃだめだよ!』と念を押されるんです。四里餅をつくれなくなってしまうので」

そんなエピソードを聞いているうちに、蒸したお米は餅つきをしてくれるマシンへ。機械でつくとはいえ、この工程が重要なのだそう。

「四里餅のお餅は、やわらかさが大切なんです。お米によっても、その時期の湿度によっても水分量が変わってくるので。できるだけやわらかくなるように、チェックしながらつくります」

あんこは、つぶあんとこしあんで製造工程がわかれます。つぶあんは小豆を煮るところからつくり、こしあんは飯能市内の横山製餡所さんから生あん(砂糖を入れていない状態のあんこ)を仕入れ、どちらも社内で仕上げます。

できたお餅とあんこは成型マシンへ。お餅とあんこを入れると、くるくる回りながら大福が出てきます。その様子がかわいらしい!

出てきた大福は手作業で整列。

小判型にするため板で軽く押します。

そして、最後の行程、焼印を押していきます。

お餅が焼ける香ばしい香りがほんのりと漂い、次々に四里餅が誕生していく様子は感動すら覚えます。

四里餅のこしあんとつぶあんは、焼印の向きで見分けることができます。これはテストに出ますので要チェックですよ(以前『飯能ご当地検定』で本当に出題されました)。

伝統の形はそのままに、さらなる美味しさを追求

四里餅の歴史は、100年以上前にさかのぼります。当時このあたりは林業が盛んで、切り出した木材で筏(いかだ)を組み、川を下って東京(江戸)へ送っていました。

その途中で、吾妻峡付近の四里(約16km)は岩場も多く、急流ということもあり難所と言われていたのです。

その吾妻峡の休憩所で売られていたのが四里餅。

難所へ挑む前にこの餅を食べ、しりもちをつかずに乗り切れるように、という縁起かつぎとしても人気だったのだそう。

その歴史を受け継ぐ現社長の宿谷さんは、お菓子メーカーで営業を経験したのち、28歳で大里屋へ入ります。

父親でもある先代の仕事を見て覚え、自分が「美味しい」と思う味を熟成させていきます。

工程がシンプルだからこそ、ちょっとした違いが味に影響してしまう。だから宿谷さんは、毎日美味しいものをつくるための努力を惜しみません。

たとえば、一日やわらかい状態を維持できるよう季節ごとにお餅の水分量を調節。あんこも冬場は少し甘めに仕上げているのだそう。

美味しいうちに食べてもらいたいから、日持ちさせるための企業努力はせず、生産量も一日で売り切れる数だけにしています。

「地元の方々にずっと愛されてきたのは、受け継いできた『味』があるからだと思うんです。だからこそ、今よりもっと美味しいものをつくるための工夫を重ねていきます」

と話してくれた宿谷さん。優しい笑顔の奥に、職人だけが持つ熱い想いが見えました。

四里餅の一日の生産数は、平日で600個、休日で800個ほど。それでも、午後3時頃には売り切れてしまいます。

「夕方来店されて売り切れと知り、すごく残念がるお客さんがいらっしゃるんです。申し訳ないなと思いつつも『ああ、そんなに食べたいと思ってくれているんだ』と内心ありがたくもあります」

四里餅を食べてみたい方は、飯能に着いたら何よりも先にお店へ向かうことをおすすめします!

関連情報

店名
大里屋本店
所在地
飯能市永田453
TEL
042-972-3600
042-972-3600
営業時間
8:30~17:00(月曜定休)

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記事を書いた人:
赤井 恒平

飯能生まれ。AKAI FactoryやBookmarkを手がけた、飯能リノベーションの第一人者。地域や人をつなぐ「橋をかける仕事」をしています。

  • 飯能市キーマン
  • AKAI Factory 代表
  • 埼玉県「まちなかリノベ賞」最優秀賞(R2年度)

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