たべる

ライター:清水 麻由

2026.05.10

食べて応援!みんなのバリアフリー空間「ニモカカカフェ」

食べて応援!みんなの
バリアフリー空間「ニモカカカフェ」

昨年4月にオープンした「ニモカカカフェ」は、飯能でのハイキングに人気の龍崖山や柏木山の麓にある、アットホームな雰囲気のカフェです。

木のぬくもりが心地よく、優しい気配に包まれた空間に、ほっとした気持ちになります。

それだけでも魅力的なニモカカカフェですが、実は普通のカフェとはちょっと違う特別な場所でもあります。

ニモカカカフェは「こどものクリニックつむぎ」に併設されていますが、それには大きな意味があるのです。

カフェを運営している「NPO法人 ニモカカ」の代表、和田芽衣さんにお話を伺いました。

情報交換の場「ニモカカクラブ」の始まり

写真家であり、三人姉妹のお母さんでもある芽衣さん。一番上のお子さんは難病と障がいをもっています。

生後間もなく発覚した娘さんの病気。不安な日々の中、芽衣さんにある想いが生まれます。

「当時、持病のある子たちの親が交流する場がなくて。悩みを共有できる場所があったらいいなと思ったんです」

一般的な遊び場に行くと見えてしまう、他の子どもとの発達の違い。うつってしまうと重症になりかねない、感染症の問題。

ともすれば引きこもりになりがちな、持病のある子の親どうしが情報交換できる場所が必要なのではないか。2015年、芽衣さんは「NPO法人 ニモカカ」の前身である「ニモカカクラブ」を立ち上げます。

かしこまって話をするような茶話会ではなく、もっと気軽に交流できたら。

飯能市内のアトリエで月2回のオープン日を設けていましたが、当事者がふらりとやって来るにはハードルが高かったのではないか、と芽衣さんは振り返ります。

「もっとフラットに、話したい相手と対等に会うには、カフェという形態がいいんじゃないかと思ったんです」

ニモカカクラブ発足の2年後には、集まったメンバーとともにカフェの構想を始めていたと言います。

物件を探したり、キッチンカーを検討したり。しかし、当時みんな子どもも小さく、資金面やカフェ運営の難しさを目の当たりに…。

動き始めたカフェオープンの夢

ニモカカクラブとして地域の人や福祉などに関わる方々と精力的に交流を続けていた折、とある話が舞い込んできます。

「2023年のあるとき、夢工房さんから『子どものためのクリニックを建てる構想があるので、一緒に何かやりませんか?』と声をかけてもらったんです」

2021年、飯能市に開所した「こどもの家こより」という、重い障がいを持つ子どもと家族のための療育施設を運営する「一般社団法人 夢工房」さんからのお誘いでした。

目指していたカフェを最良な形で実現できるのではないか。芽衣さんたちのカフェの夢が再び走り出します。

「みんなで作るみんなのカフェ」会議

「まずは『どんなカフェにしようか』と、みんなでオンライン会議をやったんです」

設備、食事、サービスはどんなものがあったらいいか。2日間にわたって、持病や障がいのある子を育てる10人ほどの親御さんたちが参加し、意見を出し合ったそうです。

「完成後のお店を描いたものだと思われることが多いのだけど」と芽衣さんが見せてくれたのは、ニモカカカフェで過ごす人々の笑顔がいっぱいのイラスト。

画像提供:ニモカカカフェ

「これは会議のときにみんなで『こんなカフェにしたいね!』と意見を出し合ったものを、イラストレーターの方にぎゅっと集約してもらったものなんです」

設計士さんもこれを見て、お店づくりをしてくれたそう。

店内には様々な配慮と遊び心が散りばめられています。例えば天井には、重度心身障がいで寝たきりの子の目線で見た時に楽しめるよう、設計士さんに梁を出してもらい、モビールなどを飾っています。

モビールは飯能市在住の彫刻家、青木野枝さん作。地域の人とつながりを大切にしている芽衣さん。カフェも地元の方々と協力してつくっていきました。

扉とカウンターは、飯能市内にある建具屋の株式会社サカモトさんに、テーブルとイスは、社会福祉法人おぶすま福祉会さんにお願いしました。

各壁に電源もあり、呼吸器などが必要な子も安心して過ごせます。

無垢材の床に靴を脱いであがるスタイルにしたのは、子どもたちがハイハイしたり寝ころんでも「まあいっか!」と親が思えるように。

「飯能にはお店の家の子や孫が店内でうろちょろしているところが結構あって。子どもを連れて行きやすい雰囲気があったし、すごくかわいがってもらえた」と芽衣さん。

「子育てが大変だった時期に、このまちのいろんなところでお世話になりました。『あのお店のこれがあって助かったな』という要素を凝縮させたんです」

キッズスペースもあり、ありがたいことに食事中にお子さんを見守ってもらうこともできます。

「小さなお店ですが、手が空いていればお子さんを抱っこしたり、絵本を読んだりさせていただいてます。何かお話ししたい、という方も気軽に声をかけてもらえれば」

スタッフのみなさんも希少・難治性疾患や障がいのあるお子さんのいる保護者だそう。

「まずはカフェを利用してみて『ここの人たちになら話してもいいな』と思えたら、ぜひお話を聞かせてくださいね」と芽衣さん。

ランチやティータイムを楽しく

ニモカカカフェでは、予約限定でラオス料理もいただけます。

調理担当のゆうこさんは、ご主人のお仕事の関係でラオスに6年間住み、現地の方々にお料理を教えてもらったそう。

「タイ料理にも似ていますが、辛過ぎないので食べやすく、日本人の味覚にも合う味わいだと思います」とゆうこさん。主食であるもち米にも親しみを感じます。

2名以上で3日前までの予約になりますが、ご興味のある方はぜひ本格的なラオス料理をご賞味ください。

ティータイムには、見た目も楽しいクリームソーダや、コーヒーと焼き菓子がセットになった「はりねずみセット」も人気。

コーヒーが苦手だった芽衣さんが、子育ての息抜きでカフェに通うようになって目覚めたコーヒーの美味しさ。美味しいな、と思う淹れ方には共通点があったそう。

それを体現したこだわりのコーヒーがいただけます。

また、ニモカカカフェには訪れた方が自由に記入できるノートが置いてあります。

そこには「カフェに寄れるのを励みに、子どもが予防接種を頑張れるようになった」といった保護者の声や、子どもたちの喜びのコメントがたくさん。

訪れる人たちによって、カフェのストーリーがどんどん綴られていきます。

景色が変わるギャラリースペース

「今は私の推し活として展示をしてます」と芽衣さんが紹介してくれたのは、壁一面のギャラリースペース。

取材時には、小学6年生の男の子の作品が展示されていました。その子には障がいがあるそうですが、あえて展示にそのことは掲げていません。

「アートの世界は、もともと障がいのありなしなんて関係ありません。私も表現者の端くれですが、彼らが生き生きと描いたり創作する姿を見てると『到底敵わない』といつも思います」

けれど、彼らの作品に触れられる機会はまだまだ少ない、と芽衣さんは言います。

「飯能のように小さなまちでも、彼らの表現に触れられる場をつくりたいと思いました」

昨年秋には、クリニックの外壁画を手がけた絵本作家のおくはらゆめさんの展示会も開催されました。

作品によってカフェの景色が変わり、楽しみも増える。無限の可能性が広がるアートの壁です。

ニモカカカフェから始まるつながり

「福祉団体に寄付する」というと何となく敷居が高いかも知れませんが、ニモカカカフェなら食べて応援することができます。

経費を除いたカフェの売上は、希少・難治性疾患や障がい福祉の向上のために使われます。カフェの利用が活動への支援につながるのです。

当事者にとっては情報交換ができる安心な空間であり、活動を応援したい人や美味しいものを食べたい人も心地よく過ごせる場所。

ニモカカクラブ発足から10年かけて育んできた、経験や人とのつながりの集大成であり、新たな始まりの場所でもあるのが、このニモカカカフェなのです。

「今までやってもらったことを返して行きたいんです。救われたから」

クリニックの利用がなくても大丈夫。気軽にランチでも、じっくりお話しでも、ハイキング帰りの休憩にも。

みんなのための、みんなのニモカカカフェで、ほっとひと息つく優しい時間をお過ごしください。

関連情報

店名
ニモカカカフェ
所在地
飯能市大河原934-2
TEL
080-9500-1027
080-9500-1027
営業時間
10:00〜15:30
※ランチタイム11:00〜14:00
定休日
日・月・祝
駐車場
あり
Instagram
@npo_nimokaka

アクセス

この記事のタグ

記事を書いた人:
清水 麻由

飯能周辺のイベントに出没しては、消しゴムはんこなどを彫る人。造形屋。自由人の夫&息子とゆるくて愉快な飯能ライフを送っています(飯能市内で広いおうち探してます)。

  • アート・クラフト屋イワオカフェ
  • くらしの修繕センター・イワオヤ
  • ウッドターニング(木工旋盤)修行中

関連記事/おすすめ記事