たべる

ライター:清水 麻由

2026.07.05

ヨルダンキッチンへようこそ!アラブ料理「アンナシーム」

ヨルダンキッチンへようこそ!
アラブ料理「アンナシーム」

飯能河原のほど近く。川沿いの木々を望む、大きな窓のあるお店が本日の舞台です。

2025年8月にオープンした「Al Naseem(アンナシーム)」は、本場のアラブ料理がいただけるカフェレストラン。

お一人でお店を切り盛りするのは、ヨルダン出身のサーメル・アブアルハイジャさんです。

アラブ料理って、どんな料理?

10年前、日本人の奥さまと結婚を機に来日したサーメルさん。故郷ヨルダンでは音楽教師をされ、弦楽器のルーツと言われている「ウード」の奏者でもあります。

そんな芸術家肌のサーメルさんがつくるお料理は、どんなものなのでしょうか?

ひとくちにアラブ料理と言っても多種多様で、アンナシームではヨルダン、シリア、レバノン、パレスチナといった国や地域の料理がいただけます。

メニューはベーシックなもので8種類ほど。予約限定の特別メニューもあります。

ライター清水がいただいたのは「ホンモスセット」。

ホンモスとは、ひよこ豆のペーストのこと。パン屋をやろうと思っていたこともあるサーメルさん特製の手づくりパンとの相性も抜群です。

日本でも専門店ができるほど人気が高まっている「ファラフェル」。

アラブ風コロッケとも言われる揚げもので、外側のカリッとした食感とひよこ豆のホクホク感がたまらない一品。

そしてこれからの暑い季節におすすめの「アラブ風アイスクリーム」は、たっぷり入ったナッツの食感とローズの香りでリッチな気分を味わえます。

故郷への想いから生まれた、こだわりの味

サーメルさんが本格的に料理に目覚めたきっかけは、2020年のコロナ禍での自粛生活だったそう。

その当時、ご家族で横浜在住だったサーメルさん。語学学校でアラビア語の先生をされていましたが、緊急事態宣言によりステイホームを余儀なくされます。

外出もままならず、ストレスフルな日々のなか、故郷ヨルダンを想い、美味しくて懐かしい現地の味を再現しようと一念発起。来る日も来る日も料理をつくり、研究を重ねたそうです。

コロナ禍の少し前、ヨルダンからオリーブオイルを直輸入し、日本での販売も始めていたサーメルさん。

ヨルダンは「オリーブオイル発祥の地」と言われ、2000年もの歴史があるそう。

取り扱っている「アルベッラオリーブオイル」は、昔から続く栽培法で育てた完全無農薬のオリーブを、収穫後すぐに搾油し充填するという極上の一品。

サーメルさんが毎年現地へ赴き、厳しい目で吟味したオリーブオイルです。料理もさることながら、サーメルさんの探究心は半端ではありません。

もともとサーメルさんは「これはどこから来て、どんな理由で、どんな起源があるのか」など、物事について詳しく知りたい性分だそう。

料理についても、全て自分で説明できるようにしていると言います。

お店の料理に使うひき肉もその一つ。

買ったひき肉だと、どこの部位を使っているのかわからないこともあり、塊肉を買って自分でミンチにしています。

「冷凍保存や出来合いのものを使ったりもしません。お料理はご注文をいただいてから、一つひとつフレッシュな状態でご提供しています」とサーメルさん。

シンプルで優しいヨルダンの家庭料理

味の要になるスパイスも、ホール(原形)を挽いてサーメルさんが独自に調合をしています。

アラブ料理=スパイシー、というイメージもありますが、それはインドに近い国に多いことなのだとか。

サーメルさんは素材の味を大切に、少しお化粧するくらいの味付けとしてスパイスを使うようにしているそう。

「あの料理には何のスパイスを入れているのか?」故郷のお料理上手なお母さんやレストランシェフの友人の話を参考に、サーメルさんが自分が好きなもの、納得するものを選んでいったそうです。

最近のヨルダンのスーパーには、手軽に使えるミックススパイスが数多く売っているとか。

「私のお母さんも、そういうスパイスを買っているようです」とサーメルさんは言います。

「なので、母には『昔はどんなスパイスを使っていたの?』と聞いてつくっていきました。完成した料理を食べたら『おばあちゃんの味だ!』って」

それはシンプルで心地よい味。サーメルさんの1歳の娘さんも食べられるほどの優しい味わいです。

当初「私にはアラブ料理はスパイシー過ぎて合わないかも…」とちょっと敬遠していたご高齢のお店のオーナーさんも、その食べやすさにすっかりハマってしまったとか。

現地でも消えつつあるヨルダンのおばあちゃんの味。それを日本で味わえるのは、とても貴重なことかもしれません。

ちなみにお店のおすすめ料理をお聞きすると「全部おすすめ!数あるアラブ料理の中から厳選したおすすめ料理が食べられます」とのこと。納得です。

つながっていく人の縁と場所の縁

6年前に横浜から日高市に移住したサーメルさんご一家。縁もゆかりもなかった飯能・日高に出会ったきっかけは何だったのでしょうか?

「コロナ禍で仕事もオンラインとなり、横浜にいる必要がなくなったんです。もともと自然が好きだったから、田舎の方へ行きたかった」

あるとき、Googleマップの航空写真を眺めていたところ、緑の多い場所を見つけます。そこには都会の駅などで見かけたことのある「飯能」の文字。

興味を持っていると、たまたま知り合いの方が飯能に知人がいるとのことで紹介してくれたそう。

「その飯能の方が『日高の清流マーケットというイベントにオリーブオイルを出品してみたら?』とすすめてくれたんです」

そうしてイベント出店のため訪れた日高の地。巾着田を見て即座に「ここがいい!ここに住みたい!」と、2か月後には日高に引っ越して来たそうです。

料理の腕を買われて、都内や横浜でアラブ料理の講師をしていたサーメルさんは、移住後も日高や飯能で料理教室や国際交流イベントを開催していました。

「そのイベントに『はんのうブックセンター』の方が来られて『イベントスペースでカフェをやってみませんか?』と声をかけてくれたんです」

週に数回、半年ほど小さなカフェを営業しながら自分のお店となる場所を探していたところ、さらなるご縁がつながります。

ブックセンターのカフェに来てくれていた常連のお客さんが「知り合いのカフェが3年前に閉まったのだけど、そこを使ってみない?」と、このお店を紹介してくれたのです。

その方の紹介なら、とオーナーさんも承諾してくれたそう。初めてお店を見たサーメルさんは感激したといいます。

「外から見た瞬間『ビンゴ!』という感じ。期待以上の場所でした」

そこから仕事終わりや休日に、いたんだ床にやすりをかけたり、ペンキを塗り直したりとご自身で1か月ほどかけてお店をリノベーション。

「大変だったけど楽しみでした。ペンキを塗るのは好き」サーメルさんは笑顔でそう振り返ります。

風がつなぐ国と国、過去と未来

店名の「アンナシーム」は「そよ風」を意味します。

はじめは日本人でも覚えやすい音で、発音しやすい名前を考えていたそうですが、ヨルダンの友人に「お店の環境に合った名前がいいのでは?」とアドバイスをもらいます。

「以前ここが『風の音』という店名だったこと、そして故郷に『アンナシーム』という有名な広場があるのでそれに決めました」

飯能河原から吹きわたるそよ風のイメージ。そしてヨルダンと日本とをつなぐ、これ以上ないぴったりの名前です。

「ヨルダン人のおうちに来たような気持ちになってほしい」とサーメルさんは言います。ヨルダンの人々は穏やかで、明るくホスピタリティが豊かとのこと。

サーメルさんが目の前でじっくりと丁寧に淹れてくれたアラブ風コーヒーを飲むと、おもてなしの心が伝わってきます。

スパイスであるカルダモンが入ったコーヒーの香りに、心も身体もほぐれていくようです。

来日して10年。言葉の壁や文化の違いを何度も乗り越え、サーメルさんが自ら切り拓いた先に築き上げた、アンナシームという空間。

音楽家のサーメルさんが、音楽を奏でるように心を込めてつくる故郷の味は、訪れる人に新しい景色を見せてくれるに違いありません。

飯能の自然とアラブ料理が織りなす豊かなハーモニーを味わいに、ぜひ足を運んでみてください。

関連情報

店名
アラブ料理カフェレストラン
Al Naseem 〜アンナシーム〜
所在地
飯能市飯能271
営業時間
【ランチ】
11:30〜15:00(L.O. 14:30)
月・水・木・土・日
【ディナー】
17:30〜21:00(L.O. 20:00)
金・土
定休日
火曜/金曜ランチ
※ヨルダンへ帰省のため臨時休業あり
TEL
070-1495-3443
070-1495-3443
ご予約
・1名から可
・11席のため予約推奨
予約限定メニューは2名から予約可
駐車場
2台あり
Instagram
@alnaseem_arab_cafe_restaurant

アクセス

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記事を書いた人:
清水 麻由

飯能周辺のイベントに出没しては、消しゴムはんこなどを彫る人。造形屋。自由人の夫&息子とゆるくて愉快な飯能ライフを送っています(飯能市内で広いおうち探してます)。

  • アート・クラフト屋イワオカフェ
  • くらしの修繕センター・イワオヤ
  • ウッドターニング(木工旋盤)修行中

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