特集・連載

ライター:赤井 恒平

2021.09.14

「センパイ移住者のーと」#03 藤井美夫さん・順子さん(永田台)

「センパイ移住者のーと」#03
藤井美夫さん・順子さん(永田台)

「理想の移住先」は意外と近くに

移住者レポート第三弾は、飯能市と日高市の間にある新興住宅街、永田台にお住まいの藤井美夫さん、順子さんにお話をうかがいました。

飯能市に移住したのは2010年。引っ越し前は西武池袋線の大泉学園にお住まいでした。都内に一軒家を持っているので大きな不満はないけれど、どこか都会の閉塞感を感じており、一生ここに住み続けるかと考えると開放的で広い空間で暮らす方がいい。そこで一念発起し、自宅を引き払って理想の生活を手に入れるため、郊外へ引っ越すことにしたのだそうです。

順子さんは漫画家なので、原稿や資料の受け渡しなどがデジタル化した今、住む場所を選びません。一方、美夫さんは出版社勤務で都内の会社へ通勤できることが条件。それは、だいたい都心から40〜50kmくらいの範囲になります。逗子、鎌倉、高尾、青梅など関東西部を見て回りましたが、なかなか理想の地に巡り会えません。

そんなある日、電車の中で「西武飯能・日高分譲地」と書かれた中吊り広告を発見。そうして出会ったのが永田台のニュータウンでした。山に囲まれた景色、個性的な家々がつくり出す街の景観、そして並木道のアプローチ。「まさか自分が住む沿線にこんなにも自然豊かな場所があったとは知りませんでした」と、一度の訪問で即決だったそうです。

薪ストーブ、温室、中庭。夢をたっぷり詰め込んだ家づくり

移住までの経緯をお話しいただいたところで、家の中を案内していただきました。

一日のうち過ごす時間が少ない玄関は必要最小限のスペースとし、その代わりに中庭をつくって植物を置くスペースを確保すると同時に開放感を演出。2Fのリビングは天井を高くすることでくつろぎの空間に。ベランダではハーブを育て、料理をするときに使っているのだそうです。また、温室は北向きに設置して夏場に暑くなりすぎないように配慮しました。さらに1Fには順子さんの仕事場を配置。仕事が忙しい時はアシスタントさんが宿泊できるスペースまで用意されています。

ここまで自分たちのライフスタイルにこだわった空間は、建売や集合住宅では実現できないのではないでしょうか。都内に比べると土地の価格が格段に違うため、その分建物にこだわれるのも田舎暮らしの魅力なのです。

次の季節が楽しみになるライフスタイル

自然豊かな環境で、やはり気になるのは通勤や買い物など普段の生活について。そのあたりも聞いてみました。

引っ越した当時、美夫さんは都内へ電車通勤していました。職場までは特急を使って1時間程度で、指定席なので確実に座ることができるから電車の往復時間も自由に使える時間となります。また、ふだんの買い物については、車さえあれば飯能市内にある百貨店、スーパー、ホームセンターまですぐ。特にスーパーは規模が大きいので品揃えが充実しています。

美夫さんは元料理雑誌の編集者とあって料理が趣味なので、そこもうれしいポイントなのだそうです。さらに、都内に用事があるときは圏央道と関越道を使って車でだいたい1時間で到着。仕事の打ち合わせや取材などで出かけるのも苦ではないと順子さん。飯能は、都市と自然のバランスを保った絶妙な立地なのです。

最後に、飯能での生活の一番よいところを聞いてみました。

「一番いいところは季節が待ち遠しくなるところです。今は夏ですが、もうすぐ山々が紅く染まります。冬が来たら薪ストーブに火を入れ、その火を眺めながらお酒を飲める。春になれば刻一刻と色づいてゆく山の変化を楽しむことができる。一日として同じ日はなく、自然と共に暮らす幸せを感じますね」

ここにあったのは、自分たちの人生を見つめ、本当に必要なものは何かを考え、その心に素直に従う。そうして手に入れることができた素敵な生活でした。

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記事を書いた人:
赤井 恒平

飯能生まれ。AKAI FactoryやBookmarkを手がけた、飯能リノベーションの第一人者。地域や人をつなぐ「橋をかける仕事」をしています。

  • 飯能市キーマン
  • AKAI Factory 代表
  • 埼玉県「まちなかリノベ賞」最優秀賞(R2年度)

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