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いつかの夢を実現させた小さな珈琲店
飯能駅の南口からバスに揺られること20分。新興住宅街の一番奥にある茜台は、最近引っ越してきた子育て世代が集まっているエリア。上田珈琲豆焙煎堂は、真新しい家々が軒を連ねるその一角にあります。
お店に入ると、まず最初に出迎えてくれるのは焙煎前の生豆と「こんにちは〜」と明るい声。座席は6席、店名の通り自家焙煎の珈琲豆販売がメインのミニマルな空間を切り盛りしているのは2016年に飯能へ移住してきた上田菜保子さん。
オープンの経緯を聞くと「本当は老後にできればいいなーくらいに思っていたんです」とのこと。そう言いながらも、20代から仕事の合間に様々な講習を受けたりSCAJコーヒーマイスターの資格を取ったり、好きなことへの努力を重ねていた菜保子さん。退職・引越しという人生の転機が訪れたときに起業へと舵を切ったのは自然な流れでした。
飯能との運命的な出会い
最初はだんなさんの職場の近くということで所沢の集合住宅を考えていたそうですが、工務店の紹介で飯能を訪れ、川があり緑あふれる環境に一目惚れ。生まれ育った九州の風景に似ていたことと、予算内で一軒家を立てられるというのが決め手になりました。
「子どもが小さいので、集合住宅だと周りが気になってしまって…。一軒家に手が届くと分かったときはうれしかったです」と菜保子さん。そして新築一軒家の一階をカフェにして、2017年に上田珈琲豆焙煎堂をオープンしました。
家族との時間を大切にするワークバランス
お店のオープンは週4日で曜日が決まっておらず、いつオープンしているのかをSNSでお知らせするという珍しいスタイル。これは、だんなさんの休みに合わせて決めているから。また、家事の体力を残しておくために営業時間は10時〜16時。これが家のことと珈琲の仕事を両立させるため菜保子さんが見つけたちょうどいい時間でした。
「本当にお客さんに助けてもらってて。一人でやっているから、お客さんが重なると待たせちゃうことも。でも、常連さんは『私は後でいいからゆっくりやってね』なんて言ってくれたりするんです。飯能の人たちはみんな優しいですね」
すっきりとした酸味のある珈琲を味わいながら、注文した珈琲豆が出来上がるのを待つ。確かに、この贅沢な時間を少しでも長く味わえるのなら、いくら後ろに回してもらっても構わないと思える小さな珈琲店です。
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記事を書いた人:
赤井 恒平
飯能生まれ。AKAI FactoryやBookmarkを手がけた、飯能リノベーションの第一人者。地域や人をつなぐ「橋をかける仕事」をしています。
- 飯能市キーマン
- AKAI Factory 代表
- 埼玉県「まちなかリノベ賞」最優秀賞(R2年度)