飯能には数多くのアーティストや…
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キャンバスに広がる、溶け合うような色彩。抽象画家ウチダミズホさんの作品の前に立つと、柔らかな光に包まれるような感覚になります。
使用する画材はアクリル絵具と筆、色鉛筆。作品の多くに見られる特徴的な縦の線は、絵具をたらしているようも見えますが、ほとんどは筆で手描きしたもの。
「縦のストロークの線が好きなのですが、たらしてしまうと『そっちじゃないんだよな』と思うところに流れてしまうこともあって。そこは自分でコントロールしたいので筆で描いています」
写真提供:ウチダミズホ
作品を鑑賞した人たちからは「滝のように見える」「水辺にいるよう」という感想をもらうことも多いといいます。
「実際水辺は好きなので、もしかしたらそういうものが出てるのかもしれないですね。『森の中の霧のよう』とも言われたことがあります」
ただ、ウチダさん自身は作品づくりの際に何かをイメージして描くことはないそう。「何を描きたい、どういう絵にしようというのは全くない状態で描いています」
描くことが身近な環境に生まれ育って
絵を描くのは、小さい頃から好きだったというウチダさん。お祖父様は油絵画家、お父様はアニメーションの背景画家をされていたこともあり、家には心置きなく絵を描ける環境がありました。
写真提供:ウチダミズホ
お父様からデッサンを教わる時間があり、子どもの頃から対象をしっかり見て描くことをしていたのだとか。
「何かを画面上でつくる楽しさは、その時間から得ることができたと思います」
それはとても貴重な体験だったと話してくれたウチダさんですが、大きくなるにつれてだんだん形を追うことに意味を感じなくなってきたそうです。
「形を写しとることはもういいかな、と感じて。正しい形や色で描くことにほぼ興味がなくなったんです」
早い段階で写実的な表現をやりきったウチダさんは、19歳頃には抽象画を描くようになります。そして初個展から25年ものあいだ作品を発表し続け、現在も多いときには年に3回というペースで展覧会を開催しています。
写真提供:ウチダミズホ
仕事と制作との良好なバランス
現在はグラフィックデザインの仕事をしながら、ご自宅のアトリエスペースで制作を続けているウチダさん。
日中はデザインの仕事をし、昼休みや仕事が終わってから制作。そのバランスがいいのかもしれない、と言います。
「デザインの仕事には『なんとなくこの書体にしました』というのはなくて、全てに必ず理由がないといけない。一方で、絵は何も決めないで描いている。仕事のときと制作とでは、脳みその違うところを使っている感覚です」
どちらも引きずることがないので、うまく切り替えられているのだそう。なんとも理想的な働き方です。
飯能移住のきっかけは「音楽」
制作も仕事も精力的に続けているウチダさんは、音楽活動もしています。いつかやりたいと思っていた弦楽器を9年前に始め、3年前からビオラを弾くようになったそう。
所属している弦楽器の団体が飯能で活動しており、飯能でのレッスンに参加し始めたのきっかけに、月に2回ほど飯能に通うようになります。
写真提供:ウチダミズホ
「すごくいいところだな、と。行くとスッキリした気分になったんです」
狭山出身ということもあり、なんとなく土地勘のある場所ではあったけれど「あらためて大人になってから来てみるといいところだな」と思ったというウチダさん。
そのうちに「住むのもありだな」と、2年ほど前に飯能へ移住を決めました。
「独特の空気感というか。自然の清々しさと、まちの規模感がちょうどいい感じがして。ざわざわしすぎてなく、静かすぎない。全部がしっくり来てしまったんです」
住んでみてどうですか?との質問に「大正解ですね!(笑)」と即答いただきました。
飯能に美術館があったら
これまで都内のギャラリーをメインに個展を行い、美術館でのグループ展に出品したこともあるウチダさん。今後やってみたいことをお聞きしました。
「飯能や近隣のまちでも展覧会をしたいです。あと、美術館規模での個展ができたらいいですね。大きな作品を飾りたいです。それこそ、飯能に美術館があったら最高だと思います」
「緑や池があって、白を基調にした建物で…。どこか環境のいいところに美術館があったらいいな。美術館ほしいですね! そこで個展をしたい。そこに飾るためならがんばれそう」
清々しい空間に、美味しいコーヒーの飲めるカフェコーナー。緑と川を望む素敵なテラス席があって…イメージはどんどんふくらみます。
「もし飯能に美術館ができたらそこで働きたいくらいです(笑)」と話してくれました。アーティストに会える美術館なんて想像するだけでワクワクします。
これまで制作した大きめの作品は、石垣島にあるホテルのホール、都内のホテルやマンションのエントランスにも飾れられているそう。ぜひ飯能のどこかでも飾ってもらえたら、とウチダさん。
「今回参加する『HANNO Art Bazaar』も定期的にやってもらって、飯能ってこんなことをやっているんだ、と知ってもらえるといいですね」
色と色が奏でるウチダミズホさんの美しい作品。見る人の心にそれぞれの色彩のイメージが浮かぶはずです。
ぜひ作品を前に、湧き上がる自分だけの感覚を味わってみてください。
写真:赤井恒平
〈現在開催中の展覧会〉
HANNO Art Bazaar
- 会期:5/26(金)〜6/4(日)
- 会場:武田ミシン(飯能市柳町5-15)
- 時間:10:00〜17:00 5/28-30休み
※イベント期間中、商店街でお買いもの1,000円以上のレシートで、ウチダミズホさんのポストカードをプレゼント!(7/2(日)まで、交換はフカダヤにて)
ウチダ ミズホ展
- 会期:5/22(月)〜6/5(月)
- 会場:バッカスギャラリー ブン(渋谷区恵比寿西2-20-14 森川コロニー402)
- 時間:18:00〜23:00 火曜定休・5/28(日)貸切営業
※バーでの展示のため、ご来場の際はチャージ500円とワンドリンクオーダーをお願いします。
関連情報
- @mizzle_mzh
- @miz_uchida
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記事を書いた人:
清水 麻由
飯能周辺のイベントに出没しては、消しゴムはんこなどを彫る人。造形屋。自由人の夫&息子とゆるくて愉快な飯能ライフを送っています(飯能市内で広いおうち探してます)。
- アート・クラフト屋イワオカフェ
- くらしの修繕センター・イワオヤ
- ウッドターニング(木工旋盤)修行中
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