特集・連載

ライター:坂本 幸

2021.08.20

木になるものがたり(第1回)気になる木

木になるものがたり
(第1回)気になる木

はじめまして「建具屋の幸(ゆき)」と申します。

私の職場は、天覧山東側にある木工所です。工場では、職人がガラス戸や障子、ドアなどの建具をつくっています。私はお客さんのご要望を聞いて製品の設計をしたり、資材を調達したり、木のものを人から人へつなぐ役割を担っています。

幼少期を木工所の近くで暮らしていたのですが、そのうち畑の中の線路は高架になり、国道299号バイパスが開通すると、ずいぶん静かになりました。よく遊んだ裏山の雑木林や田んぼの畦道はもうありませんが、このあたりは私の原風景であり、今は新たな未来の姿を想い描く大切な場所に変わりありません。

最近は新しい家も建ち、にこにこ池の周辺や宮沢湖にも新しいスポットができてにぎやかになったので、初めて飯能を訪れる方も増えたのではないでしょうか。

飯能といえば、山と川のレジャーが盛んで、地場産業として木材「西川材」の主産地です。林業地から切り出されたスギやヒノキは、かつて東京(江戸)へ向けて入間川(名栗川)や高麗川をいかだにして流送していた歴史があります。

江戸から見て西の川から来る材木なので「西川材」と呼ばれるようになったそうです(飯能には西川という地名はありません)。西川材の歴史に興味を持たれた方は、ぜひ飯能市立博物館「きっとす」も訪れてみてくださいね。

長く林業が栄えた土地ですから、多くの製材所や木工所があり、そのうちの一軒がこちらの工場でした(写真は昭和53年ごろ)。そんなわけで本連載では、木にまつわるものと人に焦点をあてて、飯能をフィールドに活躍する人たちや、木とともに過ごす空間づくりのことなどをお伝えしていければと思います。

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記事を書いた人:
坂本 幸

木工所勤務。インテリアに合わせた建具や家具の設計提案に加えて「ひとつぼキャビン」や「KADOU」など、西川材を使った新しいものづくりにも力を注いでいる。

  • インテリアコーディネーター
  • 木工インテリア相談員
  • 木育デザイン虎の穴講座 講師