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ライター:山山子

2022.10.26

山本二三さんインタビュー「五島百景への想い」

山本二三さんインタビュー
「五島百景への想い」

『天空の城ラピュタ』『火垂るの墓』『もののけ姫』『時をかける少女』など日本を代表するアニメーション映画の美術監督を務めてきた山本二三さん。

2010年から10年をかけて描き続けてきた「五島百景」の展覧会が、10月24日(月)から飯能市市民活動センターギャラリーにて始まりました。

山本二三さんの集大成とも言える「五島百景」について、お話を伺いました。

五島百景への想い

15歳で故郷を離れて、23歳のときに帰省した際、同級生と訪れた大宝という地域がとてもきれいだったんですね。海岸線や教会、住んでいる人たちの心をよりどころになる場所を描きたい、五島の文化や風景を描きたいと思いました。

そんな想いを胸に、アニメーションの美術監督として忙しい日々。故郷を描くきっかけとなったのは、設定画を描くための資料として古本屋で見つけた、一冊の雑誌でした。

そこに載っていた五島の慈恵院の聖母像にとても感動したのです。1880年、マルマン神父が慈恵院という養護施設をつくり、聖母像を建立したんですね。いつか描こうと思い、2010年に描いた『慈恵院のマリア』がはじまりです。修行の一環と考えて、仕事のあいまに100点を描きました。

思い入れのある作品を教えてください

取材を含めて大変だった作品という意味で、と苦笑しながら紹介してくれたのが『野首教会』です。

野首教会は、今は無人の野崎島にあります。船を乗り継ぎ、現地でも3時間ほど歩きっぱなしでした。苦労して教会にたどり着いたときには、足が宙に浮くくらいうれしかったですね。教会だけではなく、その土地の風土や地形も調べ上げて描きました。

「野崎島の野首教会」(五島百景より)© 山本二三

ほかにも、五島の植生をそのまま描いているという『江上天主堂』。

「江上天守堂」(五島百景より)© 山本二三

隠し港の雰囲気があるという『神爪』などの作品をあげていただきました。

「神爪(カンメ)」(五島百景より)© 山本二三

展示されている風景からは、現地に20回以上足を運び、苦労して取材を重ねてきたからこその緻密さと情熱があふれてくるよう。

何より描いた風景を見て、地元の人が「私の家の近所です!」と言ってくださったのが、とてもうれしかったそうです。

市民ギャラリーの展示は約50点。映像で「五島百景」の100点と雲を描くデモンストレーションも見ることができます。

作曲家の吉田潔さんが「五島百景」のために作曲したテーマ曲が、見る人を絵の中にとけこませてくれます。

まるで五島にいるかのような、臨場感ある巨大パネルで撮影もできるので、ぜひ記念にどうぞ。

画集やポストカードなどは、会場下の丸善書店(丸広飯能店6F)の特設コーナーで購入することができます。

地元とのコラボ企画&展示で、グッズをゲット!

今回の展覧会は、地元飯能でのコラボ企画や展示も見逃せません。

飯能駅では「五島百景」の5点をサテライト展示しています。駅構内でしか見られない作品なので、お出かけの際にぜひ。

さらに商店街とのコラボ企画で、飯能銀座商店街の「元・深田屋商店」では山本二三さんが描いた飯能の風景を10点展示しています。

ふだん見ることができない、飯能でのスケッチ、上名栗のウノタワや旧吾野小学校を描いた作品が集結。

二三さんいわく「地塗りで止めている絵やスケッチ画など、描き方が違う作品があるので、見比べてもらえたら。本当は仕上げた絵を見せたいのですが」と笑います。

五島百景の特大フォトスポットで自由に撮影(小道具あり)もできます。

そして、山本二三オリジナルクリアファイルのプレゼントもあります。飯能市商店街連盟加盟店か丸広飯能店で、2,000円以上(11/13㊐まで)のお買いものレシートを奥むさし飯能観光協会までお持ちください。

情熱、苦労、そして技術の結晶が詰まった山本二三さん集大成ともいえる「五島百景」。二三さんも「たくさんの方々にご協力いただいて、とてもうれしいです」と話します。

私も鑑賞中に五島の風景と重なったのは、自分の生まれ育った何気ない山なみ。きっと見る人の心にある故郷、風景が浮き上がると思います。ぜひ見にきてくださいね。

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記事を書いた人:
山山子

夫と3人の子どもとの自然豊かな吾野暮らし。子育てや吾野の情報を中心に執筆しています。

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